石畳の路地や、歴史を感じさせる町家が残る「神楽坂」。和と洋が調和するこの街には、どこか懐かしくて新しい、温もりあるお店が点在しています。そんな神楽坂と牛込柳町のあいだの路地裏にひっそりと佇むのが、器と生活道具の店「la terre(ラ テール)神楽坂」。
「手に取りやすい器」「自分の暮らしになじむ道具」をテーマに、作り手の想いや使い手の声を大切にしながら、丁寧に商品を選び抜くこのお店には、国内外から多くの器好きが訪れます。
今回は店舗運営者の小林さん、葛西さんへのインタビューを通じて、お店を始めた理由や、接客・仕入れの工夫・集客への想い、そして今後の展望までじっくりお話を伺いました。

目次
器を“売る”から“届ける”へ。「la terre(ラ テール)神楽坂」ができるまで
──お店の正面に入ると、まず目についたのが「カネコ小兵」の人気の器シリーズですが、食器のお店を始めようと思ったきっかけは何かあったのでしょうか?
小林さん:もともとは業務用食器の卸をメインに、オリジナル食器の開発や、全国の窯元との取引を中心に行っていました。ですが、コロナ禍をきっかけに卸業をいったんストップすることになってしまい「自分たちの手で、納得のいく商品を届けたい」という想いから小売りへと舵を切ることを決めました。これまでの経験を生かしながら、「うちのスタイルに合う食器」を一つひとつ吟味しながら選び、今は仕入れる側として、いろんな商品を見ては、その都度“うちのラインナップに合うか”を考えています。以前の経験があるからこそ、“これは本当に良い”と思えるものを提案できていると思います。

──過去の卸経験と現在の販売の視点を行き来しながら「la terre(ラ テール)神楽坂」ならではの選び抜かれたラインナップが形づくられているのですね。
地元の常連さんも、世界の器好きも集まるお店
──お店には観光で訪れる方や地元の方など、さまざまな層がいらっしゃると思いますが、実際にはどんなお客様が来店されることが多いですか?
小林さん:もともと地域の方々に愛されてきた店舗ですが、最近ではインターネット検索で調べて来店される方や、外国人観光客のお客様も増えてきています。特に、美濃焼の魅力や日本の手仕事に関心のある海外のお客様が多く、器好きの方々が目的をもって来店するケースも多いです。
──そうなのですね。海外のお客様からはどんな商品が人気がありますか?
葛西さん:カネコ小兵製陶所の「ぎやまん」や「リンカ」、美濃焼の「千鳥」シリーズが人気です。その中でも「千鳥の珍味入れ」や「野菜モチーフの小皿」は、手づくりの温もりが感じられる点が好評で、外国人の方からの支持も厚いですね。また、最近は「抹茶碗」をお求めのお客様がとても多いんです。以前は“軽量の小丼”などをご紹介していたのですが、『これではない』と明確なこだわりをお持ちの方も多くて(笑)。今は、よりニーズに合った商品をそろえるようにしています。

[掲載商品]「ぎやまん」シリーズ

[掲載商品]「リンカ」シリーズ

[掲載商品]「千鳥」シリーズ

[掲載商品]「抹茶碗」
さらに意外な人気商品が、木製のカトラリーだとか。特に小さめサイズのスプーンやフォークは、海外のお客様から「ちょうどいい」と喜ばれているそうです。
──国内のお客様からはどんな商品が人気がありますか?
葛西さん:国内のお客様には、日常づかいしやすい器や、軽くて華やかな小倉陶器の「〈煌〉シリーズ」も人気です。中でも25cmの黒の大皿は、軽量で美濃焼の質感がありつつ、キラキラとした見た目が選ばれる理由になっています。

リアルな声がいちばんのヒント。「la terre(ラ テール)神楽坂」の仕入れで意識していることとは?
──日々の仕入れで「これは大事にしている」というポイントがあれば教えてください。
葛西さん:ありがたいことに、うちに来てくださるお客様は、具体的に「このサイズ感がちょうどいい」「もっと軽い器が欲しい」「この素材の質感が好き」など“欲しいもの”を伝えてくれるんです。それをヒントに、近いものを探して仕入れることが多いですね。また、私たち自身が実際に使ってみて「これはすごく使いやすかった」「洗いやすいし、食卓がちょっと華やぐ」と感じたものを店頭に並べており、使い心地や魅力をリアルに伝えています。
──“つくり手”と“使い手”の橋渡し役として、使う人のリアルな感覚を大切にしたセレクトが「la terre(ラ テール)神楽坂」らしさを支えているんですね。
“売る”より“寄り添う”という接客
扱っているのは、食器や暮らしの道具。日々の生活に長く寄り添うものだからこそ、お客様一人ひとりの“好み”や“使うシーン”がとても重要だといいます。
──お客様が「器」を選ぶ時間を心地よく過ごせるよう、どんなことを心がけていますか?
葛西さん:器って、“これが正解”というものではないんです。お客様それぞれに好みや用途があるので、無理におすすめすると逆に引かれてしまう。だから“ご自由にご覧ください”というスタンスを大切にしています。「これお勧めですよ」といった営業トークはあえて控え、「よかったら写真を撮ってご検討くださいね」とやさしく声をかけるくらい。そんなゆるやかな接客スタイルの方が、結果的にお客様が安心して購入を決めてくださいます。ごり押しはせず、そっと後押しをする。お客様自身が“これが好き”と思えるものに出会えるような空気感が、この店ならではの心地よさにつながっていると思います。
リアルな体験×SNSで届く。知る人ぞ知る器のお店へ
──お客様はどこでお店のことを知って、来店されている方が多いですか?
小林さん:足を運ぶお客様の多くは、Instagramやホームページを見て来店する方が中心です。最近では、土日に若い女性のお客様の姿が目立つようになってきました。“食器が好きで探してきました”とおっしゃってくださる方が多いです。特にSNSを通じて“この器が気になる”と目星をつけてから来られるケースが増えました。中でも、「千鳥」シリーズの蕎麦猪口は定番人気の商品ですが、ある日「どこかの店舗で飲み物を出された器が気になって、調べてここにたどり着きました」というお客様がいらっしゃったこともありました。
蕎麦猪口は、かつて日本酒を提供する飲食店でも使用されていたことがあり、見た目も用途も自由度の高いアイテムです。気に入った柄をひとつずつ揃えていく方もいれば、一度に何種類か購入される方も多いです。

──なるほど。「知る人ぞ知る」器のセレクトショップとして、SNSやリアルな“体験”を通じてお客様との接点が広がっているのが、今の「la terre(ラ テール)神楽坂」の強みでもあるのですね。
「また来たくなる」仕掛けづくり。足を運んでもらうための工夫とは?
──新しいお客様や常連さんに「また来たい」と思ってもらうために、何か工夫されていることはありますか?
小林さん:大々的な広告やキャンペーンは行っていないのですが、リピーターのお客様との関係性づくりを何よりも大切にしています。「また来たい」と思ってくださるお客様のために、シンプルながらも喜ばれる仕組みを整えています。そのひとつが、「ポイントカード」です。お店預かりのポイントカードをつくっていて、お会計1000円で1ポイント、10ポイント貯まるとちょっとしたプレゼントがもらえるんです。プレゼントは店内から1000円くらいの好きな商品を選べる仕組みにしています。中には、「これ前から気になってたけど、買うのは迷っていたんです」と喜んでくださるお客様も多くいらっしゃいます。また、ポイントがたまると次回から10%オフになる特典もあり、自然と「また行こう」と思ってもらえる仕掛けになっています。
──無理に集客するのではなく、お客様との関係を少しずつ丁寧に積み重ねていらっしゃるのが素敵ですね。
仕入れの約7割は「スーパーデリバリー」から
現在、「la terre(ラ テール)神楽坂」で取り扱う商品の約7割は「スーパーデリバリー」から仕入れているという小林さん。
──実際に「スーパーデリバリー」を使ってみて、“ここが良かった”と感じた点はありますか?
小林さん:以前は卸の立場で器を扱っていましたが、今は“仕入れる側”としてスーパーデリバリーを活用しています。取扱いメーカーが多く、欲しい商品にたどり着きやすいのがありがたいですね。特に魅力に感じているのは、“作り手やメーカーの背景が見える商品が多いこと”と、“都度、少量からでも仕入れができる柔軟さ”です。例えば『この器、最近よく聞かれるな』というものがあったら、まずは数点だけ入れてみて、お客様の反応を見ながら次の展開を考えています。ラインナップのバリエーションが豊富なので、うちのような小さな店でも“うちっぽい器”を見つけやすいんです。常に新しい商品も追加されているので、定期的にチェックしています。

──ありがとうございます。「la terre(ラ テール)神楽坂」の品ぞろえが“ちょうどいい心地よさ”を保てている背景に「スーパーデリバリー」があるのは嬉しいです!
背伸びはしない。心地よさを守り続けるという選択
現在のお店のかたちは「ずっと思い描いていたスタイル」だという葛西さん。
──最後に、これから先どんなお店に育てていきたいですか?そしてもし“新しく挑戦してみたいこと”があれば教えてください。
葛西さん:昨年(2024年8月)から今の体制になり、「この形が、自分たちのやりたかったことなんだ」と実感できたんです。商品を“売る”というよりも、“ちゃんと伝えて届けられる”ようになった実感があります。以前よりも、はるかに商品が売りやすくなりました。これから何か大きく変えるのではなく、今の状態を丁寧に続けていくことが、一番の願いです。日々、お客様と会話を重ねながら、「これ好きかも」と手に取ってもらえる商品をそろえ、ゆっくりと信頼関係を築いていく――そんなお店の在り方こそが、「la terre(ラ テール)神楽坂」の理想そのものです。

──毎日の積み重ねの中にこそ、本当の豊かさがあるのかもしれませんね。なにか特別なことをするのではなく、今のかたちを丁寧に続けていくことで、ゆっくりと着実に広がっていく気がします。これからも、そんな想いに寄り添った場所であってほしいと感じました。本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
▼「la terre(ラ テール)神楽坂」
東京都新宿区横寺町38矢代ビル1F
(営業時間)
平日 12:00~17:00 土日 12:00~18:00 水曜定休
お店のInstagram: https://www.instagram.com/laterrekagurazaka/

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