自然と健康を大切にすることを会社の原点としているドイツのオーガニック洗剤メーカー「ソネット」。今回は日本の総代理店をつとめる「株式会社おもちゃ箱」主催の来日セミナーに参加して、ソネットの歴史と今をお聞きしてきました。
セミナーのテーマは「オーガニックソープ・洗剤 のパイオニア~水と自然を守る~そのためにソネットが出来ること」です。真摯なものづくりに励み、そのノウハウを守るための取り組みを共同経営者のレベッカ・クレーマー氏とケルスティン・シュラム氏が講演しました。
目次
ドイツNo.1、自然と健康を大切にする「ソネット」社とはどんな会社?
自然と水を守る、人と自然がつながる瞬間を大切にしたオーガニックの洗剤を作っている「ソネット」。マーケットシェアはドイツ国内のオーガニックヘルス市場の洗浄剤部門でNO.1の36.6%の売上シェアを誇ります。(Biovista 2022.1-2022.12の調査、ソネットの調査期間:2022年1月~12月)。台所・洗濯用洗剤のパイオニアであり、2023年現在で45カ国18言語の翻訳パッケージで販売されています。
1960年代、石油由来の合成洗剤で起きた水質汚染の研究が原点
ソネット社の創業は1977年ですが、製品開発のもととなった出来事は1960年代に起きた水質汚染です。1960年当時、新しい洗剤として石油由来の洗剤が市場に出回るようになりましたが、石油由来の洗剤には生分解性がなく川の堰(せき)や橋のたもとは家庭排水で泡だらけになっている光景が見られるようになっていました。
そこで1960年代にドイツの大都市圏であるルール地方で、ヨハネス・シュノア氏がドロップピクチャー法で地下水を水質調査したところ、水道水にまで石油由来の洗剤に含まれる合成界面活性剤が入っていることが分かりました。家庭排水から出た洗剤が水道水に残留していることが発見されたのです。
自然と水を守る、ソネットのシステム開発と理念
その後、ソネットのモジュラーシステムの開発が始まりました。ドイツ・ヘリシュリートのフローダイナミクス研究所では、ヨハネス・シュノア氏の理念に基づき、「100% 生分解性」「原料の無駄のない活用」「石油系界面活性剤不使用」の製品作りを始めました。
ちなみにソネットは自然がもつ水の力を大切にしていますが、世界45カ国で販売となるとその土地にあった洗剤であるか疑問を持つ人も中にはいるかもしれません。この点についてセミナーでは、「ドイツは超硬水から軟水までいろいろ水があるため、いろいろな種類の水で試している」という回答がありました。水質や洗濯の違いを想定したものづくりをしています。
社会的に責任ある企業として企業活動を続けられるようにソネット財団を設立
ソネットは2014年に財団をつくっています。その目的は、会社の利益を私腹にせず、従業員やソネット財団に還元することで社会的なイニシアティブ(先導や構想といった意味)を大切にし、良い製品づくりにいかすためです。
利益追求ではなく、自然環境を守る商品を作り続けるためにソネットを財団に
2014年、ソネット社では株式をすべてソネット財団へ譲渡しました。
その背景には昨今のドイツのオーガニック業界が抱える問題がありました。ドイツでは創業者がリタイアする時期を迎え、大手が事業を買収することが増えています。しかし買収する側には、創業者同様の想いや理念が無い場合が多く、会社やブランドが買収されることでグリーンウォッシュ(環境配慮の実態が無いのに、この商品やサービスは環境に良いと消費者を誤解させること)になってしまう恐れもあります。
こうした問題点もあることから、ソネットは財団をつくり、会社に残った利益を従業員に分配し、ソネット財団にて活用しています。財団にすることで、売却も相続の問題から離れ、ソネット社の利益はより良い製品づくりのために使われるようにしています。
この非営利のソネット財団では、とくに人智学(一人ひとりの個性を尊重し、心を豊かにすることで自分の能力を発展させる人間形成)に基づいた治療教育のサポートを行っています。また、有機農業や植物種子の研究、水の研究、養蜂などの活動を推進しており、エコロジカルな活動や文化的、芸術的な分野への取り組みも実施しています。
ソネット社は社会において責任ある企業として「利益追求ではなく、常に企業ミッションの遂行」を目標にしています。
こだわり抜く品質での3つのポイント
ソネットならではのこだわりの品質があります。その3つのポイントとは、「配合原料の選別」「有機農法栽培の原料」「リズムを与えた調合と渦巻き活性水」です。
厳しい認証もクリアした配合原料の選別にこだわり
すべてのソネット商品は、完全に生分解可能です。使用後は自然に還る原料を使用しています。成分内容はアレルギーを持つ人にとって非常に重要な情報だと考えて全成分も公開しています。遺伝子組み換えの作物は不使用で、酵素も使用していません。
ナノテクノロジー技術である「酵素」については、食器洗剤ではたんぱく質や糖などをキレイに落とす点には優れていますが、衣服の場合には酵素が繊維に残り続けてしまい、濡れたときに酵素が再活性化することで肌への刺激物となることがあります。その結果アレルギーにつながることもあるため、ソネットでは酵素を使用していません。
それから、エコ認証である「CSE認証」「NCP認証」「NCS認証」を取得し、石油由来やそれに準ずる界面活性剤も使用していません。
ソネットは一番厳しい認証もクリアする厳しい品質基準のものづくりを行ってきましたが、2021年12月には「ドイツサステナビリティ―アワード2022 大賞」を受賞しました。トランスフォーメンションフィールドソサエティ―部門の1位となり、ヨーロッパで最大規模でありとても意味のある賞でした。
一貫してエコロジーを追及した製品であることやキャンプヒルワークショップとの協働、パートナーシップに基づいたマネジメントを追求したソネット財団の存在が受賞ポイントでした。評価されています。ソネットが常にサスティナブルであることが証明され、他の企業のお手本になったという意味があります。
稀少なバイオダイナミック農法やオーガニック栽培の有機原料を使用
ソネットの製品には稀少なバイオダイナミック農法やオーガニック栽培の原材料を使用しています。
油分としては、オリーブ油、ひまわり油、菜種油、 パーム油、ココナッツ油を使用し、エッセンシャルオイルには、ラベンダー、レモングラス、ティーツリー、ローズゼラニウムを使用しています。
人と自然がつながる瞬間を大切にしているソネットのものづくりは、この自然の恵みの素材を活かして作られています。自然由来のラベンダーやレモングラスなどの香りは、日常の掃除や洗濯の時間に心地よい空間や時間をもたらしてくれます。
容器のシングルユースを減らすリサイクルの取り組み
ドイツはもともとリサイクルなど環境への意識が高い国ですが、2019年から容器包装廃棄物法が施行され、より一層、環境への具体的な行動が求められるようになりました。このころ、容器のシングルユースを減らしたいと、ソネットに対して卸先などの企業からリサイクルの仕組みを求められるようになってきました。
現在ソネットでは、独自のリサイクルサーキットを構築するために試験段階の最中です。店頭で空になったソネットの容器に詰め替えすることで容器を繰り返し利用して製品を購入できるようにしています。容器が傷んだら回収をし、リサイクルして粉砕してからもう一度製品のボトルに作り直しています。こうした取り組みで、現在ではリサイクルして作ったボトルが全体の50%ほどになりました。
自然の力を取り戻す水の再生力に注目、リズムを与えた調合と渦巻き活性水
ソネット製品の特長を説明には「リズムを与えた調合と渦巻活性水」は欠かせません。ソネットは自然の本来の力を取り戻す水の再生力をいかしたものづくりをしています。
水などの生命はリズムを与えて生まれるものと捉え、排水に流れても排水にもリズムがあり、製品作りの際に与えているリズムが自然に対して良い影響を及ぼすと考えています。
上の写真は、ソネット社の「渦巻き活性機」です。水道水を渦巻き活性機に通すことで天然の湧き水に近い状態になります。そのリズムを与えた水を洗剤の原料に使用しています。渦巻き活性機では、毎日約1万リットルの水道水が、12個の卵型のガラス容器の中を無圧で自由に旋回します。それぞれの卵型のガラス容器には、水の動きをコントロールする石を配置してあり、石を介して水が動くことで、渦巻く水が純度の高い天然水の品質へとグレードアップするのです。
またソネット洗剤に入れるオロイド混合剤はオロイドミキサーの中で精製しています。
8の字の動きは大自然にある川のように曲がりくねった動きで、液体を自己再生させるために必要な動きです。この8の字のリズムカルな動きを与えオロイド混合剤を作っています。
この作業は年に3回行っており、オロイドミキサーに金、フランキンセンス、ミルラ樹脂、ローレルの葉、オリーブオイル、 ローズ塩、ヤドリギなどの原料を入れて8の字にかき回したあと、水を加えて7日間にわたって作業を行っています。そして、流体発振器という機器の中で感光させています。こうして作られたオロイド混合剤をソネット商品にごく少量ずつ添加しています。
自然の力からヒントを得た独自の商品開発力と社会的な責任をもって自然や人に向き合うソネットの商品をチェックしよう
私自身、汚れ落ちの良さや自然の香りを気に入っており、以前からソネットの洗濯洗剤「ナチュラルウォッシュリキッド2L」と食器洗剤「ナチュラルウォッシュアップリキッド1L」をリピートしています。
使用感の良さは実感していましたが、セミナーに参加したことで、自分が選んできた商品が排水などの環境にも配慮できるんだと嬉しくなりました。そして、こんなにも真摯なものづくりが背景にあるとは想像以上でした。
環境に良いことを考えた際に、素材や成分のこだわりにとどまらず、自然本来の力を取り戻すために水のリズムや動きに注目したというのは、ソネットのユニークな魅力ではないでしょうか。
安心の原材料を使いながらも独自技術で汚れ落ちもよく、用途に合わせた充実した商品ラインナップがあり、そして社会の一員として環境も守りたいと考えるソネット。いままでもこれからも、理想の洗剤を提供してくれる頼れるオーガニック洗剤ブランドだと実感することができました。