2022年に入りガソリンや光熱費、食料品などの生活必需品の値上げが相次いでいます。

日本銀行が発表した2月の国内企業物価指数速報値は、前年同月比9.3%上昇の110.7となり、第2次オイルショック後の1981年以降で最大の伸び率となりました。

このたび、商品を製造販売する「メーカー側」の卸価格の値上げ実態と、商品を仕入れて消費者に販売する「会員事業者側」の値上げの状況について、双方にアンケート調査を行いました。

アパレル・インテリア・雑貨・食品メーカー各社の卸価格の値上げ状況

「卸価格の値上げ」の実態についてアパレル・インテリア・生活雑貨・食品を取り扱うを出展企業を中心ににアンケートを行いました。

卸価格の値上げを実施、今後値上げ予定が全体の7割(69%)

【設問1】過去数か月で卸価格の改定(値上げ)を行いましたか?あわせて今後数ヵ月の間に卸価格の改定(値上げ)を行う予定はありますか?(出展企業の回答者数:281)

卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」に出展しているアパレル・インテリア・雑貨メーカー各社の担当者281名から回答をいただきました。結果「すでに値上げを行った」28%、「今後値上げをする予定」41%、「値上げは予定していない」31%という回答になりました。今後の予定を含め、回答した出展企業の69%(7割ほど)は「値上げを実施」という結果になりました。

値上げ時期を決定している企業は4月実施が最多、全体の3割(27%)は時期未定と回答

【設問2】値上げの実施時期はいつですか?(複数回答可/出展企業の回答者数:194※)

※回答者は【設問1】で「すでに値上げを行った」「今後値上げする予定」と回答した方のうち未記入回答を除く数。

2021年12月~2022年5月の6か月間を中心に値上げの実施時期を質問したところ、「値上げの時期を決めている企業」では値上げの実施時期として回答したのは「2022年4月」が最も多く24%、次いで「2022年3月」が20%となりました。一方で、全体の27%は「時期は明確に決めていない」と回答しています。中には、複数回値上げを実施する出展企業もありました。まだまだ素材原価や輸送コストの増加など製品原価の高騰の状況などを鑑みて、長期的に値上げの傾向が続くことが予想されます。

卸価格を 値上げする理由の1位は「原材料の価格高騰」次いで「輸送費の上昇」「製造コスト」の増加と続く…

【設問3】値上げの理由として当てはまるものを全てご回答ください。(複数回答可/出展企業の回答者数:188※)

※【設問1】で「すでに値上げを行った」「今後値上げする予定」と回答した方のうち未記入回答を除く数。

値上げ理由は、全体の95%が「原材料の価格高騰」と回答しています。次いで「海外からの輸送費の上昇(66%)」「燃料費の高騰による製造コスト増加(57%)」と続いています。「その他」の回答では、「為替変動」「国内輸送費の高騰」「倉庫管理料の増加」「商品改良のため」といった理由が挙げられました。

気になる値上げする金額の幅…。10%台が5割(55%)、20%台が2割(24%)

【設問4】何割程度、価格を上げたか/上げる予定か教えてください。(複数回答可/出展企業の回答者数:190※)

※商品によって値上げ幅が異なる場合は、一番価格を上げた商品について回答。※【設問1】で「すでに値上げを行った」「今後値上げする予定」と回答した方のうち未記入回答を除く数。

値上げ商品の価格改定の金額の幅について、「10%台(元の卸価格に追加して10~19%程度の値上げ)」が5割(55%)、「20%台(元の卸価格に追加して20~29%程度の値上げ)」が2割(24%)という結果になりました。

相次ぐ製品の値上げの実情を感じる…出展企業担当者の声

値上げの実情や懸念点について自由記述で回答を求める任意の設問に対して、出展企業各社から以下のようなコメントをいただきました。

すでに自社に在庫がある商品は現行の卸価格でいけますが、今後、同じ商品の追加製造を行った場合や、同じ規格のものを新たに製造した場合は、明らかに卸価格をアップせざるを得ない状況です。(靴下・大阪府)

春夏商品で15~20%のコスト増が確定し、それに続く秋冬商品では30%以上のコスト増が見込まれています。適正な利潤確保を反映するためとはいえ、立て続けに値上げしてよいものか悩んでいます。(レディースアパレル・徳島県)

製造を行っている中国の現地価格で25~40%ほど値上げが起こっています。日本国内では実態として10%程度の値上げで抑えていますが、為替も逆風ですので、随時値上げをしていくしかないと思っています。(レディースアパレル・大阪府)

来年以降の商品ラインナップ整理(廃盤)を検討しています。(靴・岡山県)

一度値上げした商品でも、半年後にはまた値上げの可能性があり得ます。(バッグ・兵庫県)

卸価格が上がることによって注文数が減ってしまうのではないかと懸念していますが、新商品を出す、新しい仕入れ先を探す、モデルチェンジをする、デザイン変更をするなど、企業努力も並行して行っています。(スポーツ用品・栃木県)

何とか値上げを避ける方策を模索しながら、新商品から価格を見直すかどうか試案している状態です。(インテリア雑貨・愛知県)

昨年オーダーした商品が海外から全く入ってこないため困っています。(パーティ用品・大阪府)

値上げを実施しましたが、それ以降も原材料や付帯資材の値上げが続いています。次回は、上代を値上げするしかないのではと考えています。(陶磁器・石川県)

4月にギフトセットの値上げを行います。これまで、なるべく今の価格で堪えていこうと努力を積み重ねてきましたが限界を感じ、商品ブランド別に見直しながら値上げに踏み切ることにしました。少しでも取引先の皆様にご迷惑をおかけしないよう、2か月前から告知をしています。(菓子・千葉県)

まだまだ、原材料価格の高騰、輸送コストの高騰など商品を作る現場では、ある程度ゆとりをもって価格を見積もりながらも「ほんとうにこの価格のまま商品を提案する時期に無事に提案できるだろうか?」「価格を値上げて同じように価値を感じられるものだろうか?」といった価格と向き合いながら製品の価値をいかに提案していくか?という葛藤を感じることも多く、出展企業各社の苦悩と奮闘を感じられる結果となりました。

相次ぐ「卸価格の高騰」の対応について会員事業者の声をまとめ

アパレル・インテリア・生活雑貨(生活消耗品)・食品など…相次ぐ「物価高騰」。小売などの現場で商品を提供する会員事業者側の声をアンケートで集めました。

仕入れ先から卸価格を値上げすると連絡を受けた事業者は4割(39%)

【設問5】2021年12月以降に、仕入れ先から卸価格の改定(値上げ)の連絡がありましたか?(会員事業者の回答数:349)

仕入れ先から卸価格を値上げすると連絡のあった事業者は4割(39%)という結果になりました。先にあったアンケートの結果から出展企業でも卸価格の値上げを検討している企業は多いため、今後「値上げの連絡を受ける」会員事業者はまだまだ増える見込みが予想されます。

卸価格の値上げ…商品販売価格へ反映はする?

【設問6】卸価格の値上がり分は(店頭で販売する商品の)販売価格に反映させますか?(会員事業者の回答数:166※)

※商品によって価格設定が異なる場合は、最も多い対応を回答。※未記入回答を除く数。

小売事業者へのアンケートでは、仕入れ先から卸価格の値上げに関する連絡があったのは全体の39%という結果となりました。

また、卸価格の値上げに伴い、「販売価格も値上げをする」と回答したのは54%で、「販売価格は据え置き」との回答は17%、「検討中」は29%となりました。

値上げによる顧客離れの不安を多くの事業者が感じており、3割の事業者は販売価格をどうするか決めかねている状況で、すでに値上げを決めた事業者にも葛藤がみられました。消費者に値上げを受け入れてもらえるよう「正直に事情を説明するしかない」とのコメントも多く寄せられました。

[合わせて読みたい]仕入れ額高騰に対応する商品値上げはどうする?勇気をもって信頼のある商売を続けよう!相次ぐ「商品の値上げ」対応策

「価格高騰」は続く、アンケート結果から見えること

調査の結果から、今春は多くの中小メーカーが卸価格の値上げに踏み切り、それを仕入れる小規模事業者としても、販売価格の値上げが避けられない実態が浮かび上がりました。

新型コロナウイルス感染症に加え、このたび発生したウクライナ問題も大きく影響を及ぼしています。原油高に端を発する原材料や輸送費の高騰、製造コストの増加など、経営への影響が今後も続くとみられ、値上げは一度に限らず、複数回に渡って実行されるケースも予想されます。

値上げによる販売不振の懸念が強まるなか、出展企業各社は、値上げ前に告知を行い取引先への理解を求めたり、商品の原材料やデザインに工夫を施し付加価値を高めるなど企業努力を続けています。一方で、消費者に販売している事業者にとっても値上げによる顧客離れの不安が高まっており、価格設定に苦慮しているのが現状です。

値上げ前の駆け込み消費や、値上げ後の買い控えも予測されており、「スーパーデリバリー」としては引き続き価格変動の状況を注視してまいります。

調査概要

資料元:【卸価格の値上げに関する実態調査】アパレル・生活雑貨の中小メーカー7割が卸価格の値上げに踏み切る<時期は4月が最多、値上げ幅は10%台が半数超え>

調査方法 : インターネット調査

調査期間 : 2022年2月10日~2022年2月24日

調査対象 : スーパーデリバリー会員 出展企業281社/会員事業者349社

会員属性:<規模>中小規模の企業・事業者

<業種>アパレル・生活雑貨・家具・生活家電・食料品等