新型コロナの感染症法上の位置付けが2023年5月に5類へ移行し、入国も緩和された影響で各地に外国人観光客は増加しました。日本政府観光局によると外国人旅行者は2023年11月にはコロナ前とほぼ同じ244万人余となったそうです。スーパーデリバリーでも2023年の夏頃から宿泊業の会員登録が増え続けており、その中でも民泊関連の業種が増加傾向です。今回は民泊運用の専門家の方にお話を伺ってみました。
目次
代表の海外での学生時代の経験が今の事業につながった
今回は民泊運用代行の事業を展開する株式会社BizPato(ビズパト)の代表取締役の高橋拓真さんにお話を伺いました。本記事は前編と後編に分けて、前編は株式会社BizPatoについて、後編では最新の民泊事情について詳しくお聞きしました。
留学や実家でのホームステイ受け入れを経験
──まず起業に至った経緯や御社のご紹介をお願いします。
高橋様:まず起業までの背景からお話します。高校生だった2016年にオーストラリアに1年間留学をして、実家の岡山に帰国したものの英語を話せる環境ではなかったため、外国人と関わりたいと思っていました。そこで海外のバックパッカーを無料で泊める、カウチサーフィンという無料ホームステイのマッチングアプリを使って、実家で外国人の無料受け入れをしました。
大学時代に賃貸物件を民泊運営したのが始まり
高橋様:慶応大学に合格して上京したのですが、うちは3兄弟で全員留学にも行かせてもらっていたので、学費と家賃以外は自分で捻出する約束をしていました。その中で、母からairbnbという存在を教えてもらったのですが、当時のairbnbはホームステイのサイトだったんです。これはお金をもらって今までと同じようなホームステイの受け入れができるなと思って、神奈川県藤沢市で賃貸の1LDKで民泊を始めたのが始まりです。
──大学時代から!利用客というのは外国人観光客になるのですか?
高橋様:そうですね。鎌倉とかに行く外国人観光客の方が私の物件に泊まっていただいていました。それが民泊としての始まりです。鎌倉に近い立地ということもあり、結構な売り上げが立ちました。ただ、2018年に民泊新法という新しい法律が施行されて賃貸では民泊が出来なくなり、民泊を止めることになったのはショックでした。それでもどうにか続けたいなと思っていた時に、民泊に関連するブログを始めました。どうやったら稼働率が上がるか、どうやったらお客様のレビューを増やせるかなど、今まで自分の培ってきた民泊運営のノウハウなどを情報発信してブログ記事にしていました。それが民泊管理バンクという弊社のサイトの始まりです。
──民泊管理バンクのブログ記事を拝見しました!とてもわかりやすかったです。
高橋様:ありがとうございます。ブログ記事経由での問い合わせが非常に増えており、ありがたいかぎりです。
──ブログ記事にもありましたが民泊新法によって色々と規制されるようになったんですね。
高橋様:民泊の経営は誰でも始められるわけではありません。行政から許可を得てから、宿泊業として運営する必要があります。民泊の経営を行うためには、旅館業法、特区民泊、民泊新法の3つの方法から選ぶ必要があります。
・旅館業法
簡易宿所として営業できる経営スタイルで、申請が許可される難易度が最も高い方法です。旅館業として民泊を運営するため、ホテルや旅館などの宿泊施設に最も近い経営スタイルになります。運営日数に制限はありません。
・特区民泊
特区民泊とは、国が指定した国家戦略特区の中で、民泊をしても良いと認めた自治体の地域のみで認められている民泊のスタイルです。国家戦略特区に指定されている自治体は、自ら条例を定めることで、特区民泊が可能となります。特区民泊が可能な地域は東京都大田区・大阪府・沖縄・千葉県千葉市など。
・民泊新法
民泊新法による民泊は、形式的な届出を提出するだけで始められます。書類を揃え、届出を出すだけで民泊の許可が下りるため、これから民泊を経営していきたいと考えている方におすすめしたい申請方法です。許可が下りるまでも早いので、比較的早い段階から営業ができます。しかし、年間営業可能日数が180日に制限されているため、売上が立ちにくい点がデメリットです。また民泊新法による民泊は、以下の2種類に分類できます。
・家主居住型
・家主不在型
旅館業法に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて、住宅に人を宿泊させる事業者を住宅宿泊事業者といいます。住宅宿泊事業者が家主不在型の民泊を選択した場合、住宅宿泊管理業者への委託が必須となります。住宅宿泊管理業者に委託する場合、売上に対して15〜25%の手数料がかかるケースも少なくありません。
自分で住宅宿泊管理業者の資格を取得できますが、不動産資格が必要なことや登録に、数ヶ月ほどかかることがネックです。民泊の経営をすぐにでも始めたい人は、住宅宿泊管理業者の資格を持つ事業者と契約したほうがより早く売上を作れるでしょう。私は友人が住宅宿泊管理業者の資格を持っていたので一緒にやることにしました。弊社では月額最低2万円程度から、委託可能です。
当時はコロナ前の時期でしたので、民泊運営の全部を代行しますというプランしか持っていない民泊代行業者ばかりでした。私のようにもともと自分で民泊をやっていた人は自分で全部できるので、「この部分だけやって欲しい」みたいな部分的な代行ニーズを感じていました。そういう方向けに、「一部の業務委託。他はご自分で。その代わり料金は安い。」という、一部の業務だけを運営委託する仕組みを作ってブログで集客しながら契約を取っていましたね。
──なるほど、それが御社の一部代行のプランですかね?
高橋様:そうですね、当時は民泊運営の全部を請け負う代行はしていなくて、一部だけを請け負う部分代行というスタイルでやっていました。ただ、コロナ禍になって民泊から撤退するところが増え始めて弊社の契約数も減ってきたので、これまでのブログ集客のノウハウを生かして新たにWeb集客代行をやり始めました。色んな企業のオウンドメディアの運用代行がかなり上手くいって、コロナ禍でも何とか続けていけました。
コロナ禍を経て本格的に民泊運営代行事業などを展開
高橋様:コロナ禍が明けて、民泊の自社物件を始めてみたら上手くいきはじめました。民泊管理バンクで自社物件の実績なども発信しつつ、ビジネスとして自分で民泊をやりたいという人向けに丸投げの民泊運営代行サービスをやるようにしたんです。コロナ期間中のWEB集客代行の経験でSEO対策をすれば問い合わせ件数増えるノウハウは確立できていたので、そのまま自社サイトに転用すれば上手くいくと思いました。そこから問い合わせも増えてきたので社員も増やして、民泊運営の部分代行だけでなく全部代行もできるようになりました。
──今は一部よりも全部代行の方が比率は多いのでしょうか?
高橋様:いえ、昔のお客様もまだご利用いただいているのでまだ部分代行の方が多いですね。業界的にもまだ部分代行は特殊でやっている企業が少ないため重宝されます。
──自社物件はどちらにあるのでしょうか?
高橋様:豊島区の目白にあります。プロジェクターを入れたり、ビールサーバーを入れたり色々と工夫をしています。ただ、目白の自社物件に関してはどこかのタイミングで事業譲渡したいですね。お客様の利益を最大化させるのがモットーなので、自社物件が上手くいけばお客様に事業譲渡して運用してもらっても上手くいくと思っています。また、これは新しいチャレンジなのですが、別荘地でホテルのようなものを増やしていきたいと考えています。北海道に美瑛町という場所がありまして、新築で別荘を建てて2024年の夏にオープン予定となっています。
(画像)目白の自社物件はプロジェクター付き
部分代行やオーナーとの二人三脚スタイルが強み
──色々なチャレンジをされていますが、御社の最大の強みは何でしょうか?
高橋様:民泊運営の部分代行に対応できる点とオーナー様に寄り添って誠実に対応できる点だと思っています。物件の稼働率をマックスまで上げるにはオーナー様の協力が必要不可欠です。そのため、オーナー様に寄り添って二人三脚で試行錯誤を繰り返しながら運用しています。稼働率が8割になるまでは「この物件の稼働率を上げるにどうしたらいいか?」と社内の物件戦略会議で施策を考えて、オーナー様に「こんなことできないですか?」と提案して、3ヵ月以内には稼働率が8割を超えるようにしています。一例ですが、プロジェクターや観葉植物の設置などの提案や、細かいところではドライヤーの風量改善などもオーナー様に相談して改善してもらうことがあります。
ただ、お申し込み時点でどう考えても利益が上がりそうにない場合や立地的に厳しい点などがある場合は正直に伝えることもあります。そのような点を評価していただき、オーナー様の口コミで他社から乗り換えていただくケースも多いです。
今後の展望は、物件の事業譲渡や民泊による地域活性化
──最後に御社の今後の展望などあれば教えてください。
物件の運用から事業譲渡までを一気通貫
高橋様:展望は3つありまして、1つ目は物件確保からM&Aまでを一気通貫して弊社で請け負いたいです。法人においては、民泊事業に参入してキャッシュを作りたいというケースも多いです。そのため、物件の確保や運用はもちろん、最終的に事業譲渡をしてキャッシュを生むような一気通貫のサポートをしてみたいですね。
また、「民泊をしたい」という問い合わせが非常に多いので、「今やっている物件を売りたいと言ってる人がいますよ」と言うと物件を買っていただけるんですよね。一般的なM&Aサイトだと結構たたき売りされている物件が多いのですが、弊社がしっかり実績を作って運用してきた物件なので高く売れると思います。
新しい場所で自社物件の別荘を量産したい
高橋様:2つ目は、自社物件の別荘を増やしたいです。弊社の所有物件もM&Aで売却して次のキャッシュを作って別荘地で物件を購入したいと考えています。そして、ある程度運用して売れる状態になったら新規事業をしたい方にお譲りしていくという流れにしたいですね。そのためには売れる民泊エリア探しを常にしなくてはならないので日々冒険です(笑)次に民泊が来るだろうという場所で、高単価の別荘のような民泊物件をどんどん量産したいです。
民泊による地域活性化
高橋様:3つ目は地域活性化ですね。外観からインスタ映えするような物件にして、そこを観光地にしてたくさんの人に来てもらえば地域活性化できます。先ほど話した24年の夏に完成予定の北海道の美瑛町の物件は富良野と旭川の中間にあるのですが、富良野や旭川に行く人の通過地点になるため、それほど注目されていない地域です。あえてそこに物件を出すのは、インスタ映えする観光地にして地域活性化させたいという狙いもあります。
美瑛町の街中での民泊の一角だけ絵本ような世界観に作り込んで、SNS映えするような場所にすれば観光地になります。観光地が一つできれば人は来るし、それによって土地の価格も上がります。高くなる前に土地を買って物件を増やして観光地化すれば、地域も盛り上がるしお金を使う人も増えるのではないかと考えています。このようなことを各行政府と連携してやっていけたらいいなと思っています。
──新しいことにどんどんチャレンジしてすごいですね!
高橋様:フェーズによって見える世界が変わってきますね。民泊の運営代行だけをずっとやっていくのもイマイチだなと思っていたので、これからも新しいチャレンジは続けていきたいですね!
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