
神保町の街角に、八木書店の看板が佇みます。その下で、90年にわたり本と人との出会いを誠実に紡いできた物語があります。スーパーデリバリーへの「アウトレット専門店」出展を機に、書店はもちろん、雑貨店やカフェなど身近な場所でも本を届けたいと願う八木書店の想いをお伺いしました。
目次
アウトレットブックに宿る思いを届ける――90年の信念
スーパーデリバリーへの参入を機に、書店はもちろん、雑貨店やカフェなど身近な場所でも本を届けたいと願う八木書店の想い。

1934年の創業以来、古書や学術書を通じて知識と文化を繋いできました。
毎朝の朝礼では、八木書店のみなさんが言葉を唱えます。「すべての本は目的を持って生まれた。きっと行き先があるものだ。それを見つけよう」。この理念は、本を「メシの種」として大切に扱い、八木書店の魂を形作っています。顧客の信頼は、この誠実な姿勢から生まれます。
アウトレットブック事業は、この使命の中心にあります。創業当時から取り組んできたこの事業は、出版社の倉庫で眠っていた新本(新品の本)を再び読者の手に届け、知的資源を無駄にしません。
「人の伝える思いが込められて世に出た本だからこそ、その思いを本を通じて人へと届ける深い情熱を感じます」と私は取材を通じて気づきました。
「現代の言葉に置き換えるならエシカルやSDGsというものになります」とも。八木書店は、朝礼で「信用」を守ると誓い、検品の厳格さや事故処理の迅速さでアウトレットブックをはじめ、取り扱うすべての本の信頼を積み重ねてきました。
「遍在」でアウトレットブックと人をつなぐ
「遍在」の願いを胸に
八木書店のみなさんが取材中に口にした言葉が心に残りました。「決まった場所での〈偏在〉から、あらゆる場所での〈遍在〉へ」。このフレーズは、スーパーデリバリーに参入する願いを象徴しています。
2024年3月時点で、全国の書店数は約1万店、10年前の3分の2に減少し、「書店ゼロ」の市町村は27.7%に上ります。全国各地に書店が減っていく中、八木書店は書店を「本に触れるための大切な場」としながらも、雑貨店、カフェ、美容院など身近な場所でも本と人との出会いを広げたいと考えました。
スーパーデリバリーは、その新たな可能性を切り開くきっかけです。
PAGES:軽井沢で芽生えたアウトレットブックの可能性

「アウトレットブック」の新たな可能性。この想いを体現するのが、軽井沢に誕生したアウトレットブック専門書店「PAGES」です。八木唯貴社長が軽井沢に移住した際、地元のアウトレットモールに書店がないことに気づきました。「お得な商品を求める利用者にとって、アウトレットブックは新たなチャンスなのでは」。そんなひらめきから直営店出店を決意したそうです。
編集力で紡ぐアウトレットブックの魅力
「通常の書店が新刊や人気作家を押し出すのに対し、アウトレットブック専門書店「PAGES」は編集力でアウトレットブックの新たな物語を紡ぎ出しています」と私は感じました。約1,500点のアウトレットブックを厳選し、すべて表紙を見せる面陳や平積みで並べ、独自のテーマで本の魅力を引き出します。
こだわりの選定で新たな価値を
八木書店の取り扱うアウトレットブックは、国内外のアウトレットブックから丁寧に選ばれています。国内のアウトレットブックは、出版社の提案リストから「よろこんでいただけそうなもの」を意識し、リストと本を一つ一つ吟味して仕入れます。洋書のアウトレットブックは、八木社長が自ら欧米に赴き、国内のトレンドやニーズを反映したものを厳選しています。
雑貨感覚で楽しむアウトレットブック
欧米では本をインテリアとしてディスプレイする(飾る)文化があり、アウトレットブック専門書店「PAGES」でも洋書を「ビジュアルから惹かれて」手に取る方も多いそうです。まるで「レコードのジャケ買い」。「高価な洋書やデザイン本がお得に手に入るのは魅力」だと私は感じました。
この他にもアウトレットブックならではの提案として、店内ではアウトレット価格から更に、3冊以上のお買い上げで10%OFF、5冊以上で20%OFFの割引プランもあり、25~30%のお客さんが複数冊を購入されるそうです。
洋書やボックスセットを手に取り、つい他の本にも目がいく――そんな出会いがアウトレットブック専門書店「PAGES」にはあります。インテリア雑貨店のような提案ができるのも、アウトレットブックならではの魅力ですね。
アウトレットブック導入のヒント:大学の物販コーナー・手芸店の事例
「あなたのお店やサービスでも新しい本と人のつながりが提案できるかも」これから本を取り扱ってみたい事業者の方へのヒントにと、八木書店の既存お取引先様の事例を訊いてみました。
大学の物販コーナーの事例:新たな本を手に取るきっかけに
大学の物販コーナーで、学生向けに専門書(哲学や歴史など)や雑学本を選んで試験的に「アウトレットブック」の提案を導入しました。八木書店が大学のニーズに合わせて厳選し、棚1~2本分のコンパクトなディスプレイを提案したところ、1カ月で消化率70%を記録したそうです。
学生たちから「専門書がこんなに安く手に入るなんて嬉しい」「キャンパスで話題になった」と喜びの声が聞こえてきました。大学の購買担当者の方も「学生の滞在時間が伸び、他の商品の売上も上がった」と満足そうでした。
手芸店のブックフェアの事例:意外にも児童書や雑学本が好評
手芸専門店では、アウトレットブックの「ブックフェア」を開催しました。長机に「30~50%OFF」のPOPを添えたコーナーを設置したところ、意外にも…手芸本よりも児童書や雑学本が人気でした。店長さんは「アウトレットブックをきっかけにお客様との新たなつながりが増えたことで、店が賑わった」と喜ばれたそうです。
「書店以外の場所でこんなに本が受け入れられるなんて、業種を超えた新しい本との関わり方があるんだ」と私は感じました。こんな風に、身近なお店で気軽に試せるアウトレットブックなら、あなたのお店でも、独自の編集力を生かした提案や、新しい本と人とのつながりが生まれるかもしれません。
アウトレットブックで人とつながる新たな一歩

「本を扱ったことのないお店にも、気軽に試してほしい」と八木書店は呼びかけます。一般的な書籍の流通されている新本の掛け率に比べるとアウトレットブックは新本でありながら格安であるため、導入しやすいです。そう考えると、アウトレットブックは、雑貨店やカフェ、美容院など、さまざまなお店にとって誠実で親しみやすい商品だと思います。
アウトレットブックは、雑貨やインテリアのように気軽にディスプレイでき、店舗の雰囲気を高める点も魅力です。それから、今までにない編集で新たな本と人との出会いを創出することができます。書店はもちろん、身近な場所で本と人との出会いを広げるために、八木書店は丁寧な一歩を踏み出します。この「気軽さ」と「新しい業種との出会いへの期待」に、私は心を動かされました。本を愛する八木書店のみなさんの誠実な情熱と、90年の経験が、スーパーデリバリーを通じて新たな事業者とのつながりを生み、人と本の出会い方を広げていきます。
八木書店の素敵なアウトレットブックは以下からご覧ください。