「とてもおいしいコーヒーに仕上がってきているんです。自信を持ってお届けします」
そう語ってくれた嘉村さんの、うれしそうで誇らしい笑顔がとても印象的でした。
まるで雑貨のようにかわいくて、味もとびきりにおいしいコーヒーや紅茶、ハーブティーなどの食品を中心に、フェアトレード商品を展開されているパルシックさん。「フェアトレード商品を仕入れるため」ではなく、NPOの支援活動の中で「必要だから」とスタートさせたフェアトレードは、20年以上の道のりの中で着実に進化しているそうですよ。
フェアトレード部の嘉村さんに、主力商品であるコーヒーを中心にお話を伺いました。嘉村さんはなんと、東ティモールから日本への、フェアトレードコーヒーの最初の輸入に携わられた方。長い歴史を見つめてきた方ならではの、気になるお話が盛りだくさんです。
おいしいコーヒーを片手に、ぜひゆっくりとご覧ください。
(取材・文・写真 植木美穂)

「ふつうだけど、なんかおいしい」。日常に溶け込む毎日のコーヒー
パルシックさんのフェアトレードコーヒーは、そのほとんどが東ティモール産。南米にアフリカにアジア、多くのフェアトレードコーヒー産地がある中で、一つの国にぎゅっと絞って展開されるケースは、実はちょっとめずらしいんです。
嘉村さん
「パルシックのフェアトレードは、ビジネスではなくNPOの支援活動をきっかけにスタートするので、そうした背景が大きいですね。独立前の東ティモールを支援していた際の調査で、東ティモールにはおいしいコーヒーがあることがわかったんです。独立したらぜひ東ティモールからコーヒーを輸入してみたいということで、現地に入り、フェアトレードの仕組みをつくるところから始めました。そこは、NPO法人ならではかなと思います」

ぜひ輸入してみたい、と思われた東ティモール産のコーヒー。どんなお味なのか、とっても気になります。
嘉村さん
「一番の特徴は、苦みとコクと甘みのバランスが取れていることだと思います。例えば中南米のコーヒーは甘みや酸味が強かったり、アフリカのコーヒーには酸味が特徴的だったりするものもあります。東ティモールのコーヒーは、それに比べると酸味が強すぎず、ほどよく苦みがあって、甘みもある。日本人の普段のコーヒーとして、ちょうどいい味なのではないかなと思っています。
2001年に初めて東ティモールのコーヒーを飲んだときから、その印象は20年以上経った今も変わっていませんね。その後、いろいろな方に焙煎してもらったり、生豆をお渡ししたりしてきましたが、みなさん “際立った特徴があるわけじゃないけど、なんかおいしいよね”と言ってくださるんです」
“なんかおいしい”って、素敵な言葉ですね。特別なコーヒーを飲みたい瞬間もあるけれど、毎日の暮らしの中で、今日も飲みたくなる。なんだかほっとできる。そういうコーヒーの存在って、暮らしを豊かにしてくれると感じます。
焙煎するのが楽しい。その理由は “コーヒー生豆” にありました
パルシックさんのフェアトレードコーヒー「カフェ・ティモール」は、粉と豆、ドリップバッグの3タイプ。加えて生豆も販売されていて、スーパーデリバリーでも大人気商品となっています。
嘉村さん
「スーパーデリバリーさんを通じて新たなお客様に出会えるというのは、私たちにとっても新鮮な驚きでした。ライフスタイルの変化もあり、小さなロースターさんや個人の方でも、自分で焙煎してみたいという人も多くなりましたよね」
東ティモール産の“なんかおいしい”コーヒー。その理由を紐解いてみると、東ティモールのコーヒー生豆の特徴に、大きな理由があることがわかってきたそうです。
「THE COFFEE(コーヒーらしいコーヒー)」とも称される東ティモールのコーヒー豆。苦みとコクと甘みのバランスが絶妙で王道な味わいは、ほっとできる日常のコーヒーにぴったりなだけでなく、生豆の焙煎にも大きな楽しみをもたらしてくれるようです。
嘉村さん
「深く焙煎すれば、豆が持っている苦みをしっかり引き出せます。一方で、そこまで深く焙煎しなければ、後味のやわらかい甘みを感じやすくなります。また、味のバランスがとれているので、他の豆ともブレンドしやすい包容力がある。つまり、焙煎やブレンドのさじ加減によって、引き出せる魅力は無限に広がるんです」

これは、焙煎する人にとってはうれしい情報ですね。好みの味を探すのも楽しいでしょうし、焙煎家の腕が鳴りそうです。「カフェ・ティモール」の商品は、どんなこだわりで焙煎されているのでしょう。
嘉村さん
「少し深めに焙煎しています。東ティモールから届いたコーヒー生豆の良さをお伝えするために、程よい苦みも感じていただきたいということで。みなさんの日常に溶け込むコーヒーであってほしいですね」
もうひとつのうれしい情報は、有機JASを取得したオーガニック商品であるということ。
嘉村さん
「コーヒー生豆もそうですし、焙煎豆の加工も、有機JASの認証を取得した工場にお願いしています。よりよい商品を最終までお届けして、安心安全なコーヒーを飲んでいただきたいですね」
フェアトレードでオーガニック。そして、焙煎やブレンドの仕方によってさまざまな魅力を引き出せる。パルシックさんのコーヒーには、おいしさ、楽しさ、安心感。さまざまな魅力が詰まっているようです。
キッチンに飾りたくなる、雑貨みたいなパッケージを目指して
食品なので、まずはおいしいことが一番。そしてもうひとつ、パルシックさんの商品はパッケージのかわいらしさもとても魅力的です。パッケージへのこだわりを、聞いてみました。

嘉村さん
「キッチンにコーヒーがあった時のこともイメージして作っているんです。キッチンにあって楽しいものがいいなって。コーヒーのパッケージって、高級感を出すために光沢のある包材を使っていたり、光を遮断するために茶色や黒が多く使われていたりしますが、そういう視点で言うと、雑貨屋さんになじみやすいことも目指していますね。
素材は紙を採用しました。密閉性は保ちながら、なるべくプラスチックの比率を削減したいというのと、エコなイメージも込めています。ドリップバッグは外側の箱が紙製で、切り取ればそのまま設置してバラでの販売もしやすい仕様です」
「いつもの日常」を大切にされるパルシックさんの愛情が、このお話からも伝わってくるようです。
ちなみに、パッケージに描かれるワニは、東ティモールの島の形がワニに似ているといわれることから。太陽は、東ティモールの国名に「太陽の昇る国」という意味があるから。周りを彩る柄は、東ティモールの伝統織物「タイス」をモチーフにしたそうですよ。
パッケージにも、語りたくなるエッセンスがたっぷり込められていました。
フェアトレードコーヒーって、どんないいことがあるのでしょう?

フェアトレードって、取り組まれる団体や会社、認証制度などによって、実はさまざまな特徴があるんです。パルシックさんのフェアトレードは、生産者の方々にどんないいことがあるのでしょう?
嘉村さん
「コーヒー豆の買取価格に『フェアトレードプレミアム』に相当する額を足して支払っていて、それを社会的な活動に還元して使うことができます。生産者たちは自分の畑のことで精一杯になりがちですが、例えば地元の崩れた道路を直したいとか、共同の水を引きたいとか、行政サービスがなかなか行き届かない農村地帯のお困りごとを、このお金を使って自分たちで解決することができるんです。
お金は生産者組合に渡して、地域のために使っていただく仕組みをつくっています。使い道は、生産者組合で毎年話し合って決めていきます。今年はこの集落に使おうとか、倉庫を作ろうとか、カフェを作ろう、といった風にですね。
彼らがやりたいことへの資金を生み出すことができるのが、フェアトレードコーヒーに関わっていただく一番のメリットだと思います。その人たちが主役になって地域を変えていくことを応援できる、ということでしょうか」
フェアトレードコーヒーを買うことで、生産者の方々の暮らしと、地域の未来まで応援できる。たった一杯のコーヒーが、そんなに大きな意味を持つなんて。フェアトレードって、素敵な仕組みだなあと思います。
フェアトレードは、いいことだけれどちょっとお高め。そんなイメージを持つ方も多いかなと思いますが、パルシックさんのフェアトレードコーヒーは、手に取りやすい価格帯も魅力の一つです。
嘉村さん
「パルシックでは、“続けていくこと”も大切に考えています。とてもおいしいコーヒーでも、あまりに高価では買い続けることが出来ませんよね。東ティモールのコーヒー生産者にとっても、日本でコーヒーを味わう人びとにとっても、安心して続けていけること。つながり続けていけること。そういった関係性を、パルシックでは常に目指しているんです」
お互いにとって安心できる、続けていける関係性。いつもの日常を守りながら、支え合うということ。それはとっても素敵なフェアトレードの形だなあと、感銘を受けました。
パルシックのフェアトレード、はじまりの物語
パルシックさんがフェアトレード事業をスタートさせたのは、2002年のこと。
団体の設立は2008年ですが、前身となる日本のNPO「アジア太平洋資料センター(PARC)(以下:パルク)」は、なんと50年以上の長い歴史を持っていらっしゃるそう(現在も姉妹団体として活動中)。
そのパルクでは、独立前で混乱する当時の東ティモールで「人びとの暮らし」を、1990年代からサポートしていました。そして東ティモールが国として独立した時、人びとの暮らしを立て直す助けになるもの、日本のわたしたちとつながれるものとして選ばれたのがコーヒー、そしてフェアトレードでした。
嘉村さん
「おいしいコーヒーがあったこと、そして国として東ティモールが2002年にできてからは、“東ティモールのコーヒー” として輸出されることが、彼らの誇りを取り戻すことにもつながるのではないかと。そうした想いもありました」
たくさんの願いが込められて始まった、フェアトレード事業。
現在では、東ティモール(コーヒー/ハーブティー)に加えて、スリランカ(紅茶/スパイス/雑貨)でも活動を展開。暮らしをつなげる輪が、ますます広がっています。

東ティモールでは、20年以上の時を経て、事業を共にするコーヒー生産者は37世帯から約900世帯に。輸入量は初年度の7トンから、現在では100トンを超える年も。大きな広がりを支えた裏側には、「ずっとつながっていくため」に、嘉村さんが大切にされた想いがありました。
嘉村さん
「日本で販売するためには、ちゃんとしたコーヒーの品質でなければ、長く買い続けることができません。一時的には買うことができたとしても、支援だから買う、というだけではその先が続かないと、最初から東ティモールのみなさんへは強く伝えてきました。この条件を掲げて一緒に活動してきたというのが、20年以上走ってこられた大きな原点だったなと思います」
プロジェクトのはじまりから見据えていた未来への想いと愛情が、しっかりとした土台をつくり、今こうして花開いていることを感じました。
フェアトレードは世代を超えて。未来へのバトン
そして今、コーヒー生産地では世代交代が進んでいるとのこと。これも、長らく同じ土地で活動を続けてきたパルシックさんならではの出来事だなあ、と思います。さまざまな課題も抱えつつ、未来へ向けた準備も着々と進んでいるようです。

嘉村さん
「私たちが最初に立ち上げた時の農家のお父さんはもうおじいちゃんになり、その子どもたちが畑を担うような年齢になってきています。東ティモールに職業の選択肢が増えてくれば、やっぱりコーヒー栽培が魅力的なもの、生活していけるものでないと、コーヒー作りを職業に選択する若者は減ってしまいます。新しいフェーズに入っているかな、という風に思いますね。
気候変動の影響も受けていて、東ティモールは日本の猛暑とは逆に気温が上がらず、コーヒーの成熟に大きな影響を与えるときがあります。
ただ幸い、3年ぐらい前から、コーヒーの木の苗の植え替えが始まっています。お父さんたちが次の子どもたちに任せたい、たくさん実をつけるいい状態で次の世代に渡したい、ということで植え替えを進めていたんですね。植え替えがうまくいったので、収穫量としてはものすごい減産にはならずに、東ティモールのコーヒー栽培はこの先も何とか続けていけるだろう、という見込みが立ってます」
農業の世代交代に、気候変動への対応。直面する課題は、世界共通のものなのかもしれません。未来へとバトンをつなぐ準備を進められたのは、きっとフェアトレードの仕組みがあってこそ。そしてその土台には、東ティモールと日本の、親と子の、人と人とのつながり、あたたかい愛情があることを感じました。
今後の展望と、みなさまへのメッセージ
20年以上に渡り、東ティモールのコーヒー生産者の方々と二人三脚で歩んでこられたパルシックさん。変化を経た今、そしてこれからの未来を、どんな風に描かれているのでしょう。
嘉村さん
「この24年、東ティモールの生産者たちと共に切磋琢磨してきました。先においしさに共鳴していただきたいくらい、とてもおいしいコーヒーに仕上がってきているので、自信を持ってお届けします。
おいしいから、かわいいから、おもしろそうだから。そういった視点から興味を持っていただけたらうれしいですし、コーヒーを飲みながらほっとできるひとときを提供できたら、と思っているんです。
そして、私たちのコーヒーを通じて、海外の人が遠い存在ではなくて、身近なお隣の人、同じ時代に生きている人、とみなさんに感じていただけたらうれしいです。コーヒー生産者はあんな風に暮らしていて、こんな風にコーヒーを育てて収穫して、日本に送ってきてくれた。そのコーヒーを私たちが今飲んでいる、というようなつながりを、ぜひ多くの方に感じていただきたいし、背景に共感できるコーヒーがちゃんと売れる。そんな世の中にしていきたいですね」
そのコーヒー、ぜひ飲んでみたい!そんな気持ちにさせてくれる、素敵なお言葉です。
最後に、この記事をご覧いただいたみなさまへ、メッセージをいただきました。
嘉村さん
「私は日々、生産者からパワーをもらっています。彼らは大変な環境の中でもたくましく生きて、コーヒーを作ったり紅茶を作ったりしていて。そのパワーを、パワーのバトンを買ってくださるみなさまへ渡していきたいですね。
今って、生活が楽な人ばかりではない世の中ですよね。コーヒーを飲んで、産地でもがんばっている人がいるんだ、と感じていただきながら、日本では日本なりの大変さを切り抜けていく。スーパーデリバリーを活用して新しいことにチャレンジしてみたい人と、産地でがんばる人が、この商品を通してつながる。エネルギーのバトンがつながっていくといいな、という風に思います」
フェアトレードコーヒーがつなぐ、エネルギーのバトン。「応援する側、される側」というかつての形ではなく、世界のどこに暮らしていても、人と人がつながりあい、応援し合う。それを感じながら飲むコーヒーはきっととびきりにおいしくて、あたたかく、心強い気持ちになれそうです。
嘉村さん、素敵なお話をありがとうございました!

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パルシックさんは、生産地の情報を豊富に提供されています。
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取材・文・写真
エシカルデザイナー 植木美穂
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特定非営利活動法人パルシック








