
自分だけのカフェや雑貨店を開きたいという夢は、多くの人にとって希望に満ちた目標ではないでしょうか。しかし、「何から手をつければいいかわからない」「資金繰りが不安でなかなか一歩が踏み出せない」といった悩みを抱えている方も少なくありません。この憧れを現実のものとするためには、計画的で着実な準備が不可欠です。
この記事では、小さなお店を開業する際に特に重要となる二大テーマ、「資金調達」と「物件探し」に焦点を当ててご紹介します。漠然とした不安を解消し、具体的な行動計画を立てるためのヒントをたくさん盛り込みました。この記事が、あなたの夢の実現に向けた確かな一歩となることを願っています。
目次
- 1 開業準備の最大の壁?「物件探し」と「資金調達」はどっちが先?
- 2 結論:「物件探し」を先に進めるのがセオリー
- 3 【完全版】小さなお店の「物件探し」の全手順
- 4 具体的な店舗物件の探し方3選
- 5 【完全版】小さなお店の「資金調達」の全手順
- 6 資金調達の方法4選!それぞれのメリット・デメリット
- 7 融資の相談は事業計画書が要!担当者が見るポイントとは
- 8 忘れずにチェック!開業に必要な資格と届出
- 9 【カフェなど飲食店の場合】開業に必要な資格と届出
- 10 【雑貨店の場合】開業に必要な資格と届出
- 11 【共通で必要な手続き】開業に必要な資格と届出
- 12 まとめ:着実な準備で、あなただけの小さなお店を開こう
- 13 店舗開業を決めたら!お店作りに必要な備品や販売商品はお任せ下さい
開業準備の最大の壁?「物件探し」と「資金調達」はどっちが先?
小さなお店の開業を夢見る多くの方が直面する大きなジレンマが、「物件探しと資金調達、どちらを先に進めるべきか」という問題ではないでしょうか。魅力的な物件を見つけても、融資が下りていなければ契約に踏み切れません。かといって、融資の申し込みには具体的な物件情報が必要になるため、身動きが取れなくなることもありますよね。
「この物件、すぐにでも押さえたいけれど、まだ資金の目処が立っていない」「融資の申請をするにも、お店の場所が決まっていないと具体的な数字が出せない」といった板挟みの状況は、開業準備を進める上で最も悩ましい課題の一つです。このセクションでは、そんな不安を解消するために、物件探しと資金調達をどのように進めるべきか、明確な結論とその理由、そしてリスクを回避するための具体的な方法までを詳しく解説していきます。
この解説を通じて、皆さんがスムーズかつ安心して開業準備を進められるよう、具体的な行動計画を立てるヒントをお届けします。読み進めることで、漠然とした不安が解消され、夢の実現に向けて着実に前進できるはずです。
結論:「物件探し」を先に進めるのがセオリー

多くの開業希望者が悩む「物件探しと資金調達、どちらが先か」という問いに対する結論は、基本的には「物件探しを先行させるのがセオリー」です。ただし、これはすぐに本契約を結ぶという意味ではありません。
あくまで、お店のコンセプトに合う物件に「目星をつけ、具体的な見積もりを取れる段階まで進める」ことが重要です。なぜ物件探しを先行させるべきなのか、その具体的な理由については次の章で詳しく解説していきますので、ぜひ読み進めてみてください。
なぜ物件が先?融資審査で「物件の見積もり」が必要になるから
物件探しを先行させるべき最も重要な理由は、融資審査の際に「物件に関する具体的な費用」が必要になるからです。日本政策金融公庫などの金融機関に開業資金の融資を申し込む際、提出する事業計画書には、物件取得費や内装工事費、設備費用といった初期投資の具体的な金額を明記しなければなりません。
これらの費用は、実際に「この物件を借りて、このようなお店を作る」という具体的な計画がなければ算出できません。融資担当者は、事業計画書に記載された数字が現実的で、かつその場所で計画が実現可能かを厳しく審査します。物件に目星をつけ、不動産会社や内装業者から概算の見積もりを取得することは、融資審査のスタートラインに立つための必須条件なのです。
もし物件が決まっていない状態で融資を申し込んでも、「どこでどのようなお店を開くのか」が不明確なため、事業計画の実現可能性が低いと判断され、審査に通ることは難しいでしょう。物件情報は、融資担当者が「この事業主にお金を貸せば、きちんと事業を成功させ、返済してくれるだろう」と判断するための、非常に重要な材料となることを理解しておきましょう。
リスクを回避する「停止条件付賃貸借契約」とは
物件探しを先行させることは重要ですが、融資が下りなかった場合に、契約した物件の賃料が発生してしまうというリスクも伴います。このリスクを回避するための有効な手法が「停止条件付賃貸借契約」、通称「融資特約」です。
この特約は、「万が一、予定していた融資が受けられなかった場合には、この賃貸借契約は白紙に戻し、契約が成立しなかったものとする」という内容を、あらかじめ賃貸借契約に盛り込んでおくものです。これにより、開業希望者は融資が確定するまでの間、物件を確保しつつ、万が一の事態に備えることができます。停止条件付賃貸借契約を結ぶことで、リスクを負うことなく物件の申し込みと融資審査を並行して進められるという大きなメリットがあります。ただし、この特約を承諾してくれるかどうかは、大家さんや不動産会社との交渉次第となりますので、事前に相談し、合意を得ておくことが大切です。
【完全版】小さなお店の「物件探し」の全手順
自分だけの小さなお店を持つ夢を実現する上で、お店の顔とも言える「物件探し」は、その成否を大きく左右する重要なプロセスです。理想の物件との出会いが、お店の成功の半分を決める、と言っても過言ではありません。このセクションでは、「希望エリアでは賃料が高くて手が出せない」「どんな物件を選べばいいか分からない」といった多くの方が抱える不安を解消できるよう、物件探しの具体的な手順を網羅的に解説していきます。
物件の条件整理から、実際に情報を見つける方法、内見時に確認すべきポイント、そして契約締結までの注意点に至るまで、ステップバイステップで詳しくご説明します。この情報が、あなたが理想の場所を見つけ、夢の実現に向けて確実な一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。
まずは出店エリアと物件の条件を整理しよう
物件探しの第一歩は、漠然としたイメージを具体的な条件に落とし込むことです。お店のコンセプトに基づいて、「誰に」「何を」提供したいのかを明確にすることで、自ずと最適な出店エリアと物件の条件が見えてきます。たとえば、ターゲット顧客の年齢層やライフスタイルに合わせて、住宅街、オフィス街、商業施設の中など、出店エリアを絞り込みましょう。駅からの距離、周辺の交通量や人通り(平日と休日、時間帯別の違いも確認)、競合店の有無や種類、そしてエリアの家賃相場なども重要な判断材料となります。
次に、物件そのものの条件を具体的に整理しましょう。カフェであれば必要な厨房スペース、雑貨店であれば十分な陳列スペースとバックヤードの広さなど、お店の業態によって必要な広さは異なります。予算に関わる家賃や保証金、敷金といった初期費用、さらには電気・ガス・水道の容量や排気ダクトの有無、スケルトン物件(内装がない状態)か居抜き物件(前テナントの内装が残っている状態)かといったインフラ設備も細かくリストアップしてください。これらの条件を明確にすることで、物件探しを効率的に進め、理想に近い物件と出会う可能性が高まります。
具体的な店舗物件の探し方3選

出店エリアと物件の希望条件が固まったら、いよいよ具体的な物件情報の収集に移ります。店舗物件の探し方にはいくつか代表的な方法があり、それぞれに特徴があります。このセクションでは、効率的かつ多角的に情報を集めるための3つの方法、「インターネットの専門サイト」「地元の不動産会社」「居抜き物件専門サイト」をご紹介します。それぞれの探し方を理解し、ご自身の状況や希望に合った方法を組み合わせることで、理想の物件との出会いを加速させることができるでしょう。
インターネットの専門サイトで探す
店舗物件を探す上で、インターネットの専門サイトは非常に強力なツールです。メリットとしては、全国規模で多数の物件情報が掲載されているため、広範囲から条件に合う物件を手軽に探せる点が挙げられます。エリア、賃料、広さ、業種指定など、様々な条件で絞り込み検索ができるため、自宅にいながら効率的に情報収集が可能です。「 店舗そのままオークション」や「居抜き店舗.com」といった専門サイトは、居抜き物件の情報も豊富に扱っています。
一方で、デメリットも存在します。特に好条件の物件は、サイトに掲載される前に決まってしまう「水面下の物件」が多い傾向にあります。また、情報の更新にタイムラグが生じることもあるため、すでに募集が終わっている物件が掲載されている可能性もゼロではありません。効率的な検索のためには、新着物件アラートを設定したり、複数のサイトを定期的にチェックしたりするなどの工夫が有効です。
出店希望エリアの不動産会社に相談する
インターネットでの情報収集と並行して、出店を希望するエリアの不動産会社に直接相談することも非常に有効な手段です。特に、店舗物件の仲介に強みを持つ地域密着型の不動産会社は、インターネットには掲載されていない「非公開物件」の情報を多く持っている可能性があります。これは、大家さんがインターネットへの掲載を望まない場合や、特定の顧客層に限定して紹介したいと考える場合があるためです。
地元の不動産会社は、その地域の特性や家賃相場、人通りの多い時間帯、近隣住民の層など、インターネットだけでは得られない生の情報を提供してくれます。また、物件の大家さんとの関係が深く、家賃や契約条件の交渉をスムーズに進めてくれることも期待できます。不動産会社に相談する際は、作成した事業計画書を持参し、ご自身の開業への本気度と具体的なプランを伝えることが重要です。複数の不動産会社を回って、ご自身に合った信頼できる担当者を見つけることも、良い物件と巡り合うためのコツと言えるでしょう。
費用を抑えやすい「居抜き物件」も検討する

開業時の初期費用を大幅に抑えたいと考える方にとって、「居抜き物件」は魅力的な選択肢です。居抜き物件とは、前テナントが使用していた内装や設備が残された状態で貸し出される物件のことです。スケルトン物件(内装が全くない状態)と比べて、内装工事費や厨房設備、什器購入費などを大幅に削減できるため、初期投資を抑えつつ早期の開業を目指すことが可能になります。
しかし、居抜き物件にはメリットだけでなくデメリットも存在します。まず、内装や設備の自由度が低いという点です。前テナントのレイアウトや雰囲気が残るため、ご自身のコンセプトと完全に合致しない場合もあります。また、残された設備が老朽化している場合、すぐに修理や交換が必要となり、かえって費用がかさむリスクもあります。前の店のイメージが残ることで、客層を引き継いでしまう可能性もあります。さらに、前テナントから造作譲渡料(残された内装や設備を買い取る費用)を求められるケースもあるため、物件取得費用全体で見た際のコストメリットを慎重に見極める必要があります。ご自身のコンセプトや予算、今後の運営計画と照らし合わせ、メリット・デメリットを十分に比較検討した上で判断しましょう。
内見で必ずチェックしたいポイント(カフェ・雑貨店別)
物件の内見は、図面だけでは分からない実際の状況を把握するための最も重要な機会です。特に、お店のコンセプトと運営に関わる部分は入念にチェックしましょう。共通のチェックポイントとしては、まず周辺の人通りです。平日と休日、朝・昼・夜と時間帯を変えて訪れ、ターゲット層がどれくらい通行しているか、お店に立ち寄ってもらえそうかを確認します。騒音や匂い、隣接する店舗の種類もチェックが必要です。商品の搬入経路は確保されているか、お店の実際の広さや天井高はイメージ通りか、なども確認しましょう。メジャーやスマートフォンの水平器アプリなどを持参すると、より正確な情報を得られます。
【カフェなど飲食店の場合】
飲食店では、特に厨房機器の設置に関わるインフラ設備が重要です。電気の容量(アンペア)、ガスの供給方式、水道の配管位置と排水能力、そして排気ダクトの位置と状態は必ず確認してください。これらの設備が不足している場合、追加工事が必要となり高額な費用がかかる可能性があります。また、防水区画の有無も確認しましょう。これは水回りの床が防水加工されているエリアのことで、これが不十分だと営業許可が下りない可能性もあります。
【雑貨店の場合】
雑貨店では、商品の陳列のしやすさがポイントです。壁面の状態、窓からの日当たり(商品の日焼け対策が必要か)、お客様が快適に回遊できる動線が確保できるかを確認します。また、バックヤードは商品のストックや梱包作業に十分な広さがあるかも重要です。お客様の滞在時間を長くするためにも、お店全体の雰囲気や心地よさを五感で感じ取ることが大切です。
申し込みから契約までの流れと注意点
気に入った物件が見つかったら、いよいよ申し込みから契約締結へと進みます。一般的な流れは、「申し込み(入居申込書の提出)→家主審査→契約条件の交渉→重要事項説明→契約締結」です。人気物件の場合、申し込みのスピードが非常に重要になります。家主審査では、入居申込書に記載された情報だけでなく、事業計画書の内容や、借り主の支払い能力、事業の安定性などが総合的に判断されます。
契約時には、契約書の内容を隅々まで確認することが最も重要です。特に「改装の可否(A工事・B工事・C工事の区分)」については、ご自身の計画通りの内外装工事ができるかどうかに直結するため、必ず確認が必要です。A工事は建物躯体に関わる工事でオーナー負担、B工事は内装工事だが建物の指定業者で実施し費用はテナント負担、C工事はテナントが自由に業者を選び費用も負担する工事です。また、「原状回復義務の範囲」や「解約予告期間」、「禁止事項(業種や営業時間、転貸の可否など)」も、後々のトラブルを防ぐためにしっかりと確認しましょう。不明な点があれば、必ず不動産会社を介して大家さんに質問し、納得した上で契約を進めるようにしてください。
【完全版】小さなお店の「資金調達」の全手順

小さなお店を開く夢の実現には、物件探しと並んで「資金調達」が大きなハードルとなります。ここでは、「自己資金はどれくらい必要なのだろう」「融資はどうやって受けるのだろう」といった具体的な疑問にお答えするため、必要な資金額の計算から、具体的な調達方法までを網羅的に解説していきます。
資金計画をしっかり立てることは、漠然としたお金の不安を解消し、事業を安定的に継続させるための大切な土台となります。安心して開業準備を進めるためにも、このセクションで資金調達の全体像を把握し、ご自身の計画に役立ててください。
開業にはいくら必要?初期費用と運転資金の内訳
お店の開業に必要な資金は、大きく分けて「初期費用(イニシャルコスト)」と「運転資金(ランニングコスト)」の2種類があります。この二つを明確に区別し、それぞれにいくら必要かを具体的に把握することが、資金計画の第一歩です。
例えば、カフェを開業する場合、立地や物件の状態(居抜きかスケルトンか)、お店の規模にもよりますが、一般的には500万円から1,500万円程度の資金が必要になるといわれています。しかし、これはあくまで目安であり、ご自身の計画に合わせて具体的な数字を算出することが重要です。
次の章では、これら初期費用と運転資金の具体的な内訳を詳しく見ていきましょう。ご自身の夢を実現するために、どの項目にどれくらいの費用がかかるのかを把握し、現実的な資金計画を立てる参考にしてください。
初期費用(物件取得費、内外装工事費、設備費など)
初期費用は、お店を開業する際に一度だけ発生する費用で、多岐にわたります。主な項目としては、まず「物件取得費」があります。これは物件の保証金、礼金、仲介手数料などで構成され、家賃の10ヶ月分程度が目安とされています。
次に「内外装工事費」です。スケルトン物件を契約した場合は高額になりがちですが、居抜き物件であれば大幅に抑えることができます。カフェであれば「厨房設備費」(コーヒーマシン、冷蔵庫、オーブンなど)、物販店であれば「什器費」(陳列棚、レジカウンターなど)も大きな割合を占めます。その他、「家具・備品費」「広告宣伝費(開店告知など)」「食器・消耗品費」なども初期費用として計上します。
これらの費用は、お店のコンセプトや規模によって大きく変動するため、一つひとつの項目を具体的に見積もり、開業資金の全体像を把握することが大切です。
運転資金(仕入れ費、人件費、家賃など3〜6ヶ月分)
運転資金は、お店を運営していくために毎月発生する費用のことです。開業直後は売上が不安定なことが多いため、この運転資金が不足することが、お店の廃業につながる最大の原因の一つといわれています。そのため、開業時に最低でも3ヶ月分、理想的には6ヶ月分の運転資金を初期費用とは別に確保しておくことが非常に重要です。
運転資金の内訳としては、お店の「家賃」はもちろん、「水道光熱費」「通信費」「材料仕入れ費」「人件費(ご自身の生活費も忘れずに含めましょう)」「広告宣伝費(販促活動など)」「消耗品費」などが挙げられます。これらを具体的にリストアップし、月々の支出を正確に予測することで、漠然とした資金繰りの不安を具体的な数字として可視化できます。
十分な運転資金を確保することで、開業当初の売上変動に一喜一憂することなく、落ち着いてお店の運営や改善に集中できます。事業計画書を作成する際も、この運転資金の項目は特に念入りに計算するようにしてください。
資金調達の方法4選!それぞれのメリット・デメリット

開業に必要な資金の全体像が見えてきたら、次はその資金をどのように集めるかを検討する段階です。資金調達の方法は一つではなく、それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。多くの場合、複数の調達方法を組み合わせることが一般的です。
ここでは、代表的な資金調達方法として「自己資金」「融資」「補助金・助成金」「クラウドファンディング」の4つをご紹介します。それぞれの方法にはメリットとデメリットがありますので、これからの解説を参考に、ご自身の開業計画に合った選択肢を見つけていきましょう。
自己資金
自己資金は、ご自身で貯めてきた資金のことで、資金調達の最も基本的な柱となります。最大のメリットは、返済の必要がなく、資金の使い道に最も自由度が高い点です。ご自身のペースで計画的に使用できるため、事業運営の安定性に直結します。
また、日本政策金融公庫などからの融資を申し込む際、自己資金の額は、事業主の「計画性」や「本気度」を示す重要な指標として審査で非常に重視されます。一般的に、創業に必要な総資金の3分の1程度を自己資金でまかなえていると、融資を受けやすくなるといわれています。
一方で、自己資金だけで開業資金のすべてをまかなうのは難しいことが多く、すべてを使い切ってしまうと、不測の事態や売上不振の際に手元の現金がなくなり、事業継続が困難になるリスクもあります。そのため、自己資金は大切に温存しつつ、他の調達方法と組み合わせるのが賢明です。
日本政策金融公庫などからの融資
まとまった開業資金を調達する際の主要な選択肢の一つが「融資」です。特に、初めて事業を始める方にとって、最も身近で利用しやすいのが「日本政策金融公庫」の融資制度です。中でも「新創業融資制度」は、担保や保証人が不要で利用しやすい点が大きなメリットとして挙げられます。
日本政策金融公庫の融資は、民間の銀行に比べて金利が比較的低く設定されているため、返済負担を抑えられます。しかし、借りたお金である以上、当然ながら返済義務が発生します。また、融資を受けるためには、お店のコンセプトや収支計画などを具体的にまとめた「事業計画書」に基づいた厳格な審査があります。申し込みから実際に資金が振り込まれるまでには、ある程度の時間がかかることも考慮に入れて計画を立てましょう。
融資を受けることは、事業の実現可能性を金融機関から客観的に評価される機会でもあります。綿密な事業計画を準備し、しっかりとアピールすることが成功の鍵となります。
国や自治体の補助金・助成金
返済不要の資金として非常に魅力的なのが、国や地方自治体が提供する「補助金・助成金」です。これらは、特定の政策目標(地域活性化、創業支援、IT導入など)を達成するために、事業者の取り組みを支援する目的で交付されます。最大のメリットは、名前の通り返済の義務がないことです。
しかし、補助金・助成金にはいくつかの注意点があります。まず、原則として「後払い」であることです。つまり、事業にかかった費用を一旦ご自身で支払い、その後、審査を経て一部が補填される仕組みです。そのため、一時的に自己資金や融資で費用をまかなう必要があります。
また、公募期間が限定されており、申請書類の作成が非常に煩雑であること、必ずしも採択されるとは限らない(採択率が低いものもあります)こと、資金の使い道が厳しく指定されている場合が多いことも理解しておく必要があります。時間と手間がかかるものの、返済不要の貴重な資金源として、ご自身の事業内容に合った制度がないか、積極的に情報収集してみる価値は十分にあります。
クラウドファンディング
近年、開業資金の新たな調達方法として注目を集めているのが「クラウドファンディング」です。これは、インターネットを通じて不特定多数の人々から少額ずつ資金を募る方法です。特に、支援者が商品やサービスを受け取る「購入型」のクラウドファンディングであれば、集まった資金に返済義務はありません。
クラウドファンディングの大きなメリットは、資金調達だけでなく、開業前からお店のコンセプトや想いを多くの人に伝え、共感を呼ぶことで「ファン」を獲得できる点にあります。支援者はお店のオープンを心待ちにしてくれる見込み客となり、強力なPR効果も期待できます。また、目標金額の達成状況を通じて、ご自身の事業アイデアが市場にどれだけ受け入れられるかを測る、テストマーケティングとしても機能します。
一方で、目標金額に到達しないリスクや、支援者へのリターン(返礼品)の準備と発送、そして支援者とのコミュニケーションにかかる労力も考慮する必要があります。さらに、クラウドファンディングのプラットフォーム利用には手数料が発生することも忘れてはなりません。それでも、資金調達と同時に、お店のブランディングや顧客獲得を進められる効果は非常に大きいといえるでしょう。
融資の相談は事業計画書が要!担当者が見るポイントとは

融資を成功させるためには、金融機関に提出する「事業計画書」が最も重要です。この事業計画書は、単に融資を受けるための書類ではなく、ご自身の事業アイデアを客観的に整理し、実現可能性を高めるための「お店の設計図」といえます。融資担当者は、この事業計画書を通じて「この人にお金を貸して、本当に事業を成功させ、きちんと返済してくれるか」という視点で厳しく審査します。
担当者が特に重視するポイントは、主に以下の4点です。1つ目は「事業主の経験と熱意、自己資金の額」です。これまでの経験や、事業にかける情熱、そして自己資金の有無や金額は、事業への本気度を測る重要な指標となります。2つ目は「事業コンセプトの具体性と独自性」です。誰に何をどのように提供するのか、そのアイデアに市場性や競合との差別化があるのかを明確に示しましょう。
3つ目は「収支計画の妥当性」です。売上予測や経費見積もりが現実的で、具体的な根拠に基づいているかが問われます。楽観的すぎず、また悲観的すぎない、バランスの取れた計画が求められます。最後に「返済計画の実現可能性」です。事業が軌道に乗った際に、確実に融資を返済していけるだけの利益が見込めるかを、数字で具体的に示しましょう。これらのポイントを客観的なデータとご自身の熱意で説得力を持って伝えることが、融資成功の鍵となります。
カフェ・雑貨店の開業で使える補助金・助成金まとめ
カフェや雑貨店などの小規模事業者が開業時に活用しやすい、代表的な補助金・助成金制度をいくつかご紹介します。これらの制度を上手に活用することで、開業費用の負担を軽減し、事業の安定的なスタートを切ることができます。
例えば、「小規模事業者持続化補助金」は、店舗の改装費用や販路開拓(チラシ作成、ウェブサイト制作など)にかかる費用の一部を補助してくれる、汎用性の高い制度です。また、創業期の経費の一部を補助する「創業支援等事業者補助金」や、会計ソフトやレジシステムなどのITツール導入に使える「IT導入補助金」などもあります。これらの制度は、ご自身の事業計画や使途に合うものがないか、積極的に調べてみることが大切です。
ただし、補助金・助成金の公募時期や要件は、年度や地域によって変動することがよくあります。必ず国(中小企業庁の「ミラサポplus」などのポータルサイト)や各自治体の公式サイトで最新情報を確認し、申請期間を逃さないように注意しましょう。専門家(中小企業診断士など)に相談するのも、スムーズな申請のために有効な手段です。
忘れずにチェック!開業に必要な資格と届出

物件探しや資金調達といった準備と並行して、法的な手続きも計画的に進める必要があります。お店を開くためには、業態に応じた資格の取得や行政への各種届出が不可欠です。これらを知らずに開業してしまうと、法律違反となって事業が継続できなくなる可能性もあります。手続きには予想以上に時間がかかるものもありますので、このセクションで全体像を把握し、早めに準備を始めることが、スムーズな開業への第一歩となるでしょう。
このセクションでは、特にカフェなどの飲食店と雑貨店に分けて、それぞれの事業で必ず必要となる資格や許可、そして個人事業主として共通で必要な税務関連の手続きについて、分かりやすく解説していきます。必要な書類を漏れなく揃え、適切なタイミングで申請することで、安心してあなたのお店をオープンできるようになります。
【カフェなど飲食店の場合】開業に必要な資格と届出

カフェ、レストラン、居酒屋といった飲食店を開業する場合、食品を扱うため、特に厳格な衛生管理が求められます。そのため、一般的な物販店とは異なり、お店の運営には特定の資格と行政からの許可が必要となります。この後に続く「食品衛生責任者」の設置と「飲食店営業許可」の取得は、飲食店を合法的に運営するための根幹となる重要な手続きです。
食品衛生責任者
飲食店を営業する際には、お店に必ず1名以上の「食品衛生責任者」を置くことが義務付けられています。この資格を持つ人は、お店の衛生管理全般を担い、食中毒などの事故を未然に防ぐ重要な役割を果たします。
資格の取得方法はいくつかあります。調理師、栄養士、製菓衛生師といった資格をお持ちの方は、食品衛生責任者の資格も兼ねているため、新たに取得する必要はありません。これらの資格をお持ちでない場合でも、各都道府県の食品衛生協会が実施している養成講習会を受講することで、誰でも取得できます。講習会は通常1日程度で修了し、費用も数千円から1万円程度と、比較的少ない負担で取得が可能です。最寄りの食品衛生協会のウェブサイトなどで、開催日程や申し込み方法を確認してみてください。
飲食店営業許可
飲食店をオープンするには、お店の所在地を管轄する保健所から「飲食店営業許可」を得ることが法律で義務付けられています。この許可がなければ、飲食物を提供することはできません。許可取得までの主な流れは、「保健所への事前相談」から始まり、「申請書類の提出」、「店舗施設の検査」、そして「許可証の交付」となります。
特に重要なのは、内装工事を開始する前に、必ず店舗の図面を持って保健所に事前相談に行くことです。保健所の担当者は、厨房の配置、給排水設備、換気設備、手洗い場の位置など、施設の構造が食品衛生法に適合しているかを細かくチェックします。もし、工事完了後に規定を満たしていない部分が見つかると、多額の追加費用をかけて改修工事を行わなければならず、開業が大幅に遅れてしまうリスクがあります。事前に相談することで、このような無駄な出費や時間を避け、スムーズに許可を取得することができます。
【雑貨店の場合】開業に必要な資格と届出

雑貨店のような物販店を開業する場合、飲食店とは異なり、基本的に特別な営業許可は不要なケースが多いです。しかし、取り扱う商品の種類によっては、特定の許可が必要となる場合があります。例えば、この後に解説する「古物商許可」は、中古品を取り扱う場合に必須となる許可です。
古物商許可(中古品を扱う場合)
アンティーク雑貨、古着、中古家具、あるいは委託販売で中古品を扱うなど、一度消費者の手に渡った物品(古物)を仕入れて販売する事業を行う場合、「古物商許可」の取得が法律で義務付けられています。この許可は、盗品の流通防止を目的としており、古物営業法に基づいて運営されます。もし無許可で古物を買い取って販売した場合は、罰則の対象となりますので注意が必要です。
古物商許可は、お店の所在地を管轄する警察署の防犯係に申請して取得します。申請には、住民票や身分証明書、誓約書などの書類が必要となり、審査には通常1ヶ月から2ヶ月程度の期間がかかります。中古品を少しでも取り扱う予定がある場合は、必ず事前に警察署に相談し、必要な手続きを漏れなく行うようにしましょう。これにより、安心して中古品を取り扱うことができます。
【共通で必要な手続き】開業に必要な資格と届出
個人事業主としてお店を開業する場合、業種や取り扱う商品・サービスに関わらず、すべての事業者に共通して必要となる税務関連の手続きがあります。この後に解説する「開業届」と「事業開始等申告書」は、事業を開始したことを公的に届け出るための重要な書類であり、忘れずに提出する必要があります。
開業届
個人事業主として事業を開始した場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」、通称「開業届」を税務署に提出する義務があります。この届出は、事業を開始した日から1ヶ月以内に行うこととされており、お店の納税地を管轄する税務署へ提出します。
開業届と同時に「所得税の青色申告承認申請書」を提出することを強くおすすめします。青色申告を選択すると、最大で65万円の所得控除が受けられる「青色申告特別控除」をはじめ、赤字を翌年以降3年間繰り越せるなど、節税面で非常に大きなメリットがあります。手間は少しかかりますが、長期的に見れば大きな節税効果が期待できるため、ぜひ活用を検討してみてください。
事業開始等申告書
税務署に提出する開業届とは別に、事業所の所在地がある都道府県税事務所へ「事業開始等申告書」を提出する必要があります。これは、個人事業税に関する手続きで、事業を開始したことを地方自治体にも知らせるためのものです。提出期限は自治体によって異なりますので、必ず各自治体のウェブサイトで最新の情報を確認してください。
この申告書は、提出しなくても直ちに罰則を受けるケースは少ないとされています。しかし、事業を開始した際に原則として提出が求められる書類であり、地方税の適切な課税のためにも、忘れずに提出することが推奨されます。地域によっては、提出しないことで、本来受けられるはずのサービスや情報提供を受けられない可能性もゼロではありません。
まとめ:着実な準備で、あなただけの小さなお店を開こう
小さなお店の開業という夢の実現に向けて、コンセプト設計から始まり、理想の物件探し、実現可能な資金調達、そして各種法的な手続きまで、やるべきことは多岐にわたります。時には「何から手をつければいいのか」「本当にできるのか」と不安に感じることもあるかもしれません。しかし、このガイドでご紹介したように、一つひとつのステップを丁寧に着実にクリアしていくことで、夢は必ず具体的な形へと変わっていきます。
特に、開業準備の大きな二大テーマである物件探しと資金調達は、それぞれが密接に関わっています。融資の申し込みには物件の見積もりが不可欠であり、一方で物件契約には資金の裏付けが必要です。この二つを並行して、かつリスクを最小限に抑えながら進めるための「停止条件付賃貸借契約」のような有効な手段も存在します。また、事業計画書を緻密に作成し、運転資金に余裕を持たせることは、開業後の安定した経営の礎となります。
「失敗したくない」という不安は、誰しもが抱く自然な感情です。しかし、その不安を乗り越え、この記事で得た知識と情報を武器に、あなただけのお店作りへ一歩踏み出してください。この記事が、あなたの理想とする素敵な居場所をこの世に生み出すための、確かな一助となれば幸いです。
店舗開業を決めたら!お店作りに必要な備品や販売商品はお任せ下さい
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