
「売上は伸びているのに、なぜか利益が残らない」「人手不足でバックオフィス業務が回らない」——中小製造業・メーカーの経営者様なら、一度はこうした悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。実はその原因、膨らみ続ける販管費(販売管理費)にあるかもしれません。本記事では、販管費の基本的な考え方から、売上高比率を使った適正水準の見極め方、そして明日からすぐに着手できる4つの削減策を解説します。
中小製造業の利益を圧迫する「販管費」とは?

製造業やメーカーでは、原材料費や物流費の高騰によって利益が圧迫されています。しかし、利益改善のためには原価だけでなく、「販管費」に目を向けることも重要です。
販管費には、人件費や広告宣伝費、営業活動費など、事業を運営するために欠かせない費用が含まれています。一方で、業務の見直しや販路の最適化によって削減できる余地が大きい費用でもあります。
まずは販管費の基本的な考え方について理解していきましょう。
販管費とは販売費と一般管理費のこと
販管費とは「販売費及び一般管理費」の略称で、実務上は「販売管理費」と呼ばれることも多く、商品を販売するための広告宣伝費や営業活動費、会社を運営するための人件費や事務費などが含まれます。この販管費は、大きく分けて「販売費」と「一般管理費」の2つで構成されています。それぞれの内訳は、中小製造業の皆様にとって身近な費用が多く含まれていますので、自社の損益計算書と照らし合わせながらご確認ください。
まず「販売費」は、製品を顧客に届けるまでにかかる費用を指します。具体的には、製品の魅力を伝えるための広告宣伝費、販売員の人件費、製品を梱包して発送するための荷造運賃、販売代理店に支払う販売手数料などが該当します。例えば、展示会出展費用や営業担当者の交通費なども販売費に含まれます。
次に「一般管理費」は、企業全体の経営活動を維持・管理するために発生する費用です。こちらは、代表者や役員への役員報酬、本社や工場の地代家賃、水道光熱費、通信費、事務用品費、従業員の給与手当(製造ライン以外)、福利厚生費、減価償却費などが含まれます。製造業においては、研究開発費も一般管理費に計上されることが多いです。
売上原価との違い
販管費と並んで企業の費用を構成する重要な要素に「売上原価」がありますが、これら二つは明確に異なる性質を持っています。
売上原価は、製品を製造したり、仕入れたりするために直接かかった費用、すなわち「直接費」を指します。製造業の場合、製品の材料費、製造ラインで働く従業員の給与、製品を加工するための外注費、工場で使用する機械の減価償却費などが売上原価に該当します。
一方、販管費は、製品を販売し、会社全体を管理・運営するために間接的にかかった費用、すなわち「間接費」です。製品が売れるかどうかに関わらず発生する費用が多く、例えば、営業担当者の給与、オフィスの家賃、広告費、管理部門の事務用品費などがこれに当たります。
利益を改善するためには、売上原価の削減だけでは限界があります。販管費にも目を向けることで、より効率的に収益構造を改善できる可能性があります。では、なぜ今、多くの中小製造業で販管費削減が重視されているのでしょうか。
中小製造業・メーカーで販管費削減が重要視される理由
近年の中小製造業・メーカーを取り巻く環境は厳しさを増しています。原材料費やエネルギー価格の高騰に加え、人手不足による人件費の上昇も続いています。
しかし、販売価格への転嫁には限界があり、利益率の低下に悩む企業は少なくありません。そのため、自社でコントロールしやすい販管費の見直しが重要視されています。特に、広告宣伝費や営業コスト、事務作業にかかるコストには改善余地が残っているケースが多くあります。業務効率化や販路の見直しによって、利益を維持しながらコストを削減できる可能性があります。
ただし、販管費削減は単に支出を減らせばよいというものではありません。次に、コスト削減との違いについて見ていきましょう。
販管費削減と単なるコストカットの違い
販管費削減というと、経費を一律に削減するイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、単なるコストカットは、かえって売上や生産性を低下させるリスクがあります。例えば、広告費を大幅に削減した結果、新規顧客の獲得が減少したり、営業人員を減らしすぎて既存顧客への対応が不十分になったりするケースもあります。
重要なのは、不要なコストを減らしながら、売上につながる活動は維持または強化することです。そのためには、業務の効率化や販路の見直しなど、「利益を生み出す仕組み」を構築する視点が欠かせません。その第一歩として、まずは自社の販管費の内訳を正しく把握することから始めましょう。
販管費削減を進める前に把握したい販管費の内訳

販管費を削減するためには、まずどの費用にどれだけ支出しているのかを把握することが重要です。削減余地の大きい費用を見極めることで、売上や生産性を落とさずに利益改善を進められます。
また、費用の大小は金額だけでなく、売上高比率で捉えることも欠かせません。販売管理費率(販管費率)は「販管費÷売上高×100」で算出でき、この売上高比率を業界平均や自社の過去実績と比較することで、どの費用が突出しているのか、削減の優先順位はどこにあるのかを客観的に判断しやすくなります。
人件費
販管費のなかでも大きな割合を占めるのが人件費です。営業部門や管理部門の給与、賞与、社会保険料などが含まれます。人件費は安易に削減すると従業員のモチベーション低下や人材流出につながるため注意が必要です。単純に人を減らすのではなく、業務の自動化や効率化によって生産性を高める視点が求められます。
広告宣伝費
広告宣伝費には、Web広告や展示会への出展費用、パンフレット制作費などが含まれます。特に中小製造業では、展示会への出展や新規営業に多額の費用を投じているケースが少なくありません。しかし、十分な成果につながっていない場合は、販路そのものを見直すことも重要です。
広告費を削減するだけでなく、より効率的に見込み顧客へアプローチできる方法を検討することで、販管費の最適化につながります。
営業関連費
営業活動には、出張費や交通費、接待交際費などさまざまなコストが発生します。特に全国へ営業活動を行っているメーカーでは、移動コストや人件費が大きな負担になりがちです。営業活動のオンライン化やデジタルツールの活用によって、これらのコストを大きく削減できる可能性があります。
営業活動にかかるコストを可視化することが、販管費削減の第一歩です。
事務・管理費
事務・管理費には、オフィス賃料や消耗品費、通信費などが含まれます。一つひとつの金額は小さくても、積み重なると大きな負担になるため、定期的な見直しが必要です。また、紙での管理や手作業が多い企業では、間接的な人件費も発生しています。
業務フローを見直すことで、コスト削減と業務効率化を同時に実現できる可能性があります。
システム利用料・外注費
毎月発生するシステム利用料や外注費も、見直しの余地がある費用です。利用頻度の低いシステムや、業務内容に対して費用が見合っていないサービスを契約しているケースもあります。一方で、コスト削減だけを優先して必要なシステムを停止すると、業務効率が低下することもあります。
重要なのは、費用対効果を見極めながら、最適な投資を行うことです。
販管費削減につながる具体的な方法

では、具体的にどのような方法で販管費を削減できるのでしょうか。
販管費の削減は、単なる経費削減ではなく、業務の効率化によって少ないコストで成果を上げられる体制をつくることが重要です。
業務プロセスのデジタル化・自動化を進める
販管費削減を進めるうえで、多くの企業に共通して効果が大きいのが、日常業務のデジタル化と自動化です。特に営業や製造といった直接的な収益活動ではなく、事務処理や管理業務といった間接業務においては、改善の余地が大きく残されています。
従来の業務では、紙やExcelを用いた手作業による処理が多く、入力や確認、転記といった作業に多くの時間が割かれていました。また、複数部署で同じ情報を二重入力するなど、非効率なプロセスが発生しやすい構造になっています。
こうした業務をデジタル化することで、情報の一元管理が可能となり、作業の重複や確認工数を削減できます。さらに、自動化ツールを活用すれば、定型的な処理をシステムに任せることができ、人的ミスの削減にもつながります。
ペーパーレス化を推進する
販管費の中で最も大きな割合を占める人件費を「削減」ではなく「最適化」する上で、ペーパーレス化やクラウドツールの活用は不可欠です。これらの施策は、紙媒体の管理コストや印刷コストを削減するだけでなく、情報共有のスピードアップやリモートワーク環境の構築にも寄与し、生産性向上とコスト削減の双方を実現します。
契約書や請求書を電子化することで、印刷代や郵送費だけでなく、保管や検索にかかる時間も削減できます。ペーパーレス化は比較的取り組みやすく、すぐに効果を実感しやすい施策の一つです。
固定費や契約内容を見直す
オフィス賃料やシステム利用料、保守契約などの固定費は、一度削減に成功すればその効果は継続し、直接的に企業の営業利益改善へとつながります。これまでの経営で「当たり前」と捉えていた経費の中にこそ、見直しの余地が隠されていることが多くあります。
売上が好調な時ほど固定費への意識が薄れがちですが、中小製造業を取り巻く環境は常に変化し、予期せぬ経済変動や原材料費の高騰などが起こりえます。そのような状況下でも安定した経営を続けるためには、平時から固定費を効率的に管理し、無駄を排除する体制を築くことが不可欠です。
アウトソーシングを活用する
専門性の高い業務や繁閑差の大きい業務は、外部へ委託することで人件費の最適化につながります。ただし、単純に外注費を増やすのではなく、社内で行う場合との費用対効果を比較することが大切です。
「業務を外部に任せることで品質が落ちるのではないか」「自社のノウハウが流出するのではないか」といった不安を感じる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、アウトソーシングは適切な計画と管理のもとで行えば、多くのメリットをもたらします。
製造業・メーカーが特に取り組みたい販管費削減施策
製造業やメーカーでは、業務効率化だけでなく、販売活動の進め方そのものを見直すことで大きな販管費削減につながるケースがあります。特に、人手不足や営業コストの増加に悩む企業では、従来のやり方を前提とせず、デジタル化や販路の再設計を進めることが重要です。
受発注業務の効率化
受発注業務を電話やFAX、メールで行っている場合、確認作業や転記作業に多くの時間を要します。また、入力ミスや伝達漏れが発生しやすく、結果として余計な工数やコストが発生することもあります。
受発注システムを導入して業務をデジタル化すれば、担当者の負担を軽減できるだけでなく、受注から出荷までのリードタイム短縮にもつながります。日常業務の小さな非効率を改善することが、販管費削減の大きな一歩になります。次に見直したいのが、管理部門の負担が大きい請求業務です。
与信管理・請求業務の効率化
新規取引先が増えるほど、与信管理や請求業務の負担も大きくなります。取引先ごとの与信確認や請求書の発行、入金確認、未回収時の督促などは、多くの工数を必要とする業務です。
これらをシステム化したり、外部サービスを活用したりすることで、管理部門の負担を軽減できます。また、未回収リスクの低減につながるため、経営の安定化にも寄与します。バックオフィス業務を効率化できれば、その分のリソースを売上拡大につながる活動へ振り向けることができます。
広告宣伝費・販売コストの根本見直し
売上を創出するために不可欠な広告宣伝費や販売促進費は、ともすれば「聖域」として見直しの対象から外されがちです。しかし、中小製造業の経営を盤石なものにするためには、これらのコストについても費用対効果(ROI:Return On Investment)の観点から厳しく見直し、本当に新規顧客の獲得や売上向上に繋がっているのかを客観的に評価する視点が不可欠です。
長年の慣習で続けている広告出稿や展示会への出展が、現在の市場環境や顧客ニーズに合致しているのかを再検証することが、販管費削減の重要な一歩となります。この見直しは単なるコストカットではなく、より効果的なプロモーション戦略を構築し、限られた予算を最大限に活かすための戦略的なアプローチです。
販売チャネルの見直し
販管費削減を進める際に見落とされがちなのが、販売チャネルそのものの構造です。多くの企業では、既存の営業手法や広告手法を前提にコストを最適化しようとしますが、実はチャネル設計を見直すことで、営業活動や広告宣伝にかかるコスト全体を大きく圧縮できる可能性があります。
従来型の営業や広告施策は、一定の成果を得るために継続的な投資が必要であり、販管費の中でも固定的に発生しやすい領域です。そのため、単なる効率化ではなく、販売の仕組み自体を見直す視点が重要になります。
BtoB ECの活用が販管費削減につながる理由

この課題を解決するための一つの有効な手段が、企業間取引専用のECサイト、いわゆる「ネット卸(BtoB-EC)」への移行や併用です。
営業コストの削減につながる
従来の対面営業や訪問営業では、営業担当者が取引先を訪問し、商談を重ねながら契約に至るまで多くの時間とコストが発生します。また、小口取引の場合には、営業工数に対して利益が見合わないことも多く、結果として取引自体を断らざるを得ないケースもあります。これは機会損失であると同時に、営業活動の非効率化にもつながっています。
一方でBtoB ECを活用すれば、オンライン上で取引先が商品を閲覧し、そのまま受注につなげることが可能です。口座開設や個別の商談プロセスを最小限にできるため、小規模な取引でも効率的に対応できます。
BtoCに比べプロモーション費用などが抑えられる
一般的にBtoC販売は、消費者に直接販売できるため中間コストが少なく、販管費を抑えやすいと考えられがちです。しかし実際には、オンライン販売では別の形でコストが発生します。
特にECモールや自社ECで販売する場合、商品を見つけてもらうためのプロモーション活動が不可欠になります。広告出稿やSEO対策、モール内での露出強化など、多くのマーケティング施策が必要となり、その費用は企業側の負担となります。その結果、売上は立っていてもプロモーションコストがかさみ、利益率としては想定より低くなるケースも少なくありません。
一方でBtoB ECや卸チャネルでは、既に購買意欲のある小売事業者が集まっているため、過度な広告投資を行わなくても取引につながる可能性があります。必要以上の集客コストをかけずに販売機会を確保できる点は、販管費削減の観点で大きなメリットです。このように、販売チャネルをBtoC中心からBtoBへと見直すことは、単なる販路拡大ではなく、広告宣伝費や営業コストを含めた販管費全体の最適化につながる重要な戦略といえます。
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まとめ
販管費削減は、単に経費を切り詰める取り組みではなく、企業の利益構造そのものを見直す重要な経営課題です。人件費や事務コストの効率化といった日常業務の改善に加え、販売チャネルや営業手法といった事業の根幹に関わる部分まで踏み込むことで、より大きな効果が期待できます。
また販管費削減は一度きりの施策ではなく、継続的に改善を重ねることで企業の利益体質を強化していく取り組みです。本記事をきっかけに、自社のコスト構造と販売戦略を改めて見直し、持続的な成長につながる仕組みづくりを進めていきましょう。
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